イタリア政局、さらに混迷 首相信任投票、連立3与党が棄権

イタリアのドラギ首相(ロイター=共同)
イタリアのドラギ首相(ロイター=共同)

【パリ=三井美奈】イタリア上院で20日、ドラギ首相の信任投票が行われ、左右の3与党が棄権した。ドラギ首相は追い詰められ、政権は崩壊の瀬戸際にある。前倒し総選挙が行われるとの観測が広がっている。

ドラギ氏は20日、上院の演説でロシアのウクライナ侵攻やエネルギー高騰に触れ、「結束が必要な時だ」と訴えた。その後、信任投票が行われ、賛成95、反対38で可決されたが、左派の最大与党「五つ星運動」のほか、右派でサルビーニ前内相が率いる「同盟」、ベルルスコーニ元首相の中道右派「フォルツァ・イタリア」がボイコットした。

ドラギ氏は21日に下院で演説し、辞意表明を行うとみられている。その場合、マッタレッラ大統領が議会を解散し、総選挙を行うか否かを判断する。ドラギ氏の辞意表明は14日に続き、2度目となる。

政局混乱の発端は、五つ星が、政府のウクライナ武器支援に反対したことだった。対立が深まり、五つ星は14日、政府の物価対策法案の採決で棄権した。ドラギ氏は、この法案を信任投票と位置付け、「与党の総意が得られない」として辞意を表明した。この時は大統領が認めず、議会で収拾を図るよう求めた。

右派2党が今回、離反の動きに出たのは、前倒し総選挙を促すためとみられる。世論調査によると、総選挙が行われた場合、右派が優勢な情勢にある。任期満了に伴う総選挙は、来年前半に予定されている。

ドラギ氏は、欧州中央銀行(ECB)前総裁で、2012年、ユーロ圏債務危機の収束で大きな役割を果たした。昨年2月、大連立政権の首相に就任。手堅い財政運営で、国際社会の信頼が高い。現在は、新型コロナウイルス禍からの経済復興、ロシア産ガス依存からの脱却を進めているさなかだった。

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