性と生と死 直木賞の窪美澄さんが描くもの

「夜に星を放つ」(文芸春秋)で第167回直木賞に決まった窪美澄さん(日本文学振興会提供)
「夜に星を放つ」(文芸春秋)で第167回直木賞に決まった窪美澄さん(日本文学振興会提供)

「小説家としては隅で生きてきた人間が、前に立って会見するなんて、冗談じゃないかと…」。3度目の正直で直木賞を射止めた窪美澄さんは20日、喜びを静かにかみしめた。

受賞作は新型コロナウイルス禍で婚活アプリで出会った恋人との関係に悩む32歳の女性会社員や、学校でいじめを受ける女子中学生ら5人に焦点を当てた短編集。大切な存在を失った過去をもつそれぞれの物語は、星や星座が彩りになり展開していく。

「登場人物が年齢を重ねる長編とは異なり、狭い範囲を描くのが短編。読後、どんづまりの気持ちではなく、少しでも希望をもってもらえるようにと心がけた」

平成21年、「女による女のためのR-18文学賞」でデビューした。出版社側から求められて「性」を描く一方、「生と死」も作風の中心を貫く。

「子供を生後わずかで病気でなくしたことが、あまりに大きい。生のすぐそばに死があり、ずっと抱えていくテーマ」と話す。

午後に4~5時間、集中して執筆する。女性向け体操教室に週3回通うほか、生活にメリハリをつけるため昨秋、23区内から引っ越した東京郊外の自宅で星をながめるのが癒しタイム。

文学賞の選考委員を務め、若い世代の作品を読む立場でもある。「熱量に圧倒され〝負けてられないな〟と。残り時間は少ない。早くいいものを書きたい」。文壇に輝く星のような作品を放ち続ける。

(伊藤洋一)

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