母親や妹など大切な存在を失いながらも希望を模索する人たちを温かな筆致で描いた短編集『夜に星を放つ』で、第167回直木賞に決まった窪美澄さん(56)が20日夜、東京都内のホテルで記者会見し、喜びを語った。会見での主なやり取りは次の通り。
--今の気持ちは
「うれしさよりまだ実感があまりなくて。身体的な反応が感情より先走ってまして、(会見を待つ間)屛風の裏にいたんですが、汗が止まらず、飲んだ水のおいしいこと。こんなにおいしい水を飲んだのは生まれて初めてじゃないかってくらいです。だからたぶん、すごくうれしいんだと思います」
--選考では、コロナについて逃げずに書いた点も評価された
「5編のうち2編がコロナについて書かれています。やっぱりこの3年間に非常に重いものを私もみなさんも抱えて生きていかなければならなくて。せめて小説の中ではちょっと心が明るくなるようなものを、と思って書いたのがこの作品集です」
--これまで生と性、死を描いてきた。この短編集への思いは?
「今回の短編集はあまり性が前面に出ていないと思いますが、デビューが、『女による女のためのR-18文学賞』。初期の作品は性が前面に出たものが多いと思います。死についてはコロナで病で亡くなっていく方もいましたし、私自身も経験として長男をなくしています。なので、どうしても、自然ににじみ出てくるテーマです」
--今後について
「デビューがすごく遅咲きで、44歳で最初の本が出ました。残された時間でいかに良質な作品を出すかが課題。直木賞の名前に恥じない作品を書いていきたい」