昨年7月23日の東京五輪開幕から間もなく1年。新型コロナウイルスの感染拡大で、全国をつなぐ聖火リレーは、多くの区間で中止や縮小に追い込まれた。「このまま終わりにしたくない」。公道でのリレーが中止となった町田市ではこのたび、ボランティアとして関わる予定だった市民が発案し、市内のリレーコースを歩くイベントが開催された。1年越しに現場の雰囲気を味わい、参加者らは自国開催の五輪、地域への思いを新たにした。(中村翔樹)
晴天に恵まれた今月9日午前9時。ボランティア団体「まちだサポーターズ」のメンバー約40人が、聖火リレーのスタート地点の薬師池公園西園を出発した。
鎌倉街道を進み、ゴール地点の多目的広場「町田シバヒロ」まで約5・8キロのコース。道中、ごみ拾いもしながら約3時間かけて歩いた。
ちょうど1年前の昨年7月9日。メンバーはリレーコースの沿道に立ち、観覧客の誘導などのボランティアに当たる予定だったが、新型コロナの影響で直前に中止となった。
1年後の同じ日に行われたウオーキングイベントでは、多くのメンバーが、ボランティア用に支給されたピンク色のユニホームに身を包んで参加。「一回も袖を通していなかったが、ようやく着られた」と笑みがこぼれた。
イベントを発案した同市金森の谷川博宣さん(73)は、「昨年は自宅で(代替イベントの)トーチキスセレモニーの映像を見ていた。さみしい思いだった」。ウオーキングの構想はそのときに浮かんだといい、「カレンダーを確認したら、1年後の7月9日は土曜日。多くの方が参加できるだろうし、ぜひ実現させたいと考えた」と振り返る。
東京五輪を巡っては、聖火リレーの中止にとどまらず、観客も原則、競技会場に入れないなど異例ずくめの大会となった。町田市関連では、市内の約3・4キロが男女自転車ロードレースのコースの一部となったが、沿道応援は自粛が呼びかけられた。
熱中症対策など市側との調整も経て実現した、〝幻の聖火コース〟をたどる行程。メンバーの中には、聖火ランナー予定者もいて、トーチなどを持参して参加してもらった。谷川さんは「改めて五輪が東京であったんだ、町田であったんだと認識する機会になった」。さらに参加者からは「公園にこんなに緑がある」、「道沿いの花がきれい」など地域の魅力に気付く声が多く挙がり、イベント開催に二重の意義を感じたという。
「来年以降も続けたい。さまざまな思いを深め、つなげていけたら」。谷川さんはそう展望を語った。
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町田市では8月8~12日(11日は祝日で休み)に市庁舎1階で、トーチキスセレモニーや、パラリンピックの海外選手団との交流の様子などを収めた写真展を開催する。市スポーツ振興課は「あまり認識がないまま大会期間を過ごした方もいると思う。展示を通じ、魅力を知ってほしい」としている。