スポーツビジネス第一人者と紳士服大手、五輪で急接近

東京五輪・パラリンピック組織委員会の高橋治之(はるゆき)元理事(78)が、大会スポンサー企業の「AOKIホールディングス」側から多額の資金提供を受けていたことが明らかになった。日本のスポーツビジネス界の第一人者として知られる高橋氏と、紳士服大手。両者を急接近させたのは、世界中の注目が集まる「五輪」という巨大イベントだった。(吉原実、桑波田仰太、石原颯)

「世界中のスポーツ関係者は全員、彼を知っている」。ある業界関係者は、高橋氏についてこう語る。

慶応大学を卒業後、大手広告会社「電通」に入社した高橋氏は、平成14年に開催されたサッカーの日韓ワールドカップ(W杯)誘致に携わるなど「電通の展開するスポーツビジネスの中心人物」(関係者)として、世界のスポーツ界に幅広い人脈を築いてきた。

電通で専務や顧問を務め、退職後の26年6月、組織委理事に選任。新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた令和2年3月、いち早く大会延期の検討を提起したことでも注目を集めた。

奔走したのは五輪のスポンサー探し。そんな中で頼ったのが、以前からゴルフ事業などで親交があったAOKI前会長の青木拡憲(ひろのり)氏(83)だった。「スポンサーになってほしい」との依頼を、青木氏は快諾。その後、AOKIは開会式などで選手らが着る「公式服装」や審判団の服などを製作。公式ライセンス商品の販売も可能になった。

一代でAOKIを紳士服大手に築き上げた青木氏は、五輪の招致活動にも尽力していたという。アパレル業界関係者は「五輪選手の服装などはフルオーダーで、もうからない。『五輪の衣装を手がけた』という宣伝効果を重視したのだろう」と話す。

一方、高橋氏は組織委理事でありつつ、スポーツ関連のコンサルティング業務や放映権ビジネスなどを手掛けるビジネスマンの一面も持ち合わせていた。国内のゴルフ大会の優勝ジャケットを担当するなどスポーツ分野にも進出していたAOKIは、高橋氏の「ビジネス」の顧客でもあった。

高橋氏が代表取締役を務めるコンサル会社「コモンズ」がAOKI側と契約を結び、4500万円が提供された約4年間は、AOKIが五輪スポンサーに選定され、公式服装などを手掛けた時期と重なる。

高橋氏は「組織委に対する不正な働きかけはない」とし、渡った金銭はスポーツ分野のコンサル業務に対する対価だと強調する。だが、それが組織委の理事としての職務に関係してくれば、賄賂性を帯びる。東京地検特捜部は、全容解明に乗り出すとみられる。

会員限定記事会員サービス詳細