「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記

次期阪神監督に平田2軍監督の昇格案、球団内にも待望論

球団内から次期監督の待望論のある平田勝男2軍監督
球団内から次期監督の待望論のある平田勝男2軍監督

阪神の来季、新監督の最有力候補者として平田勝男2軍監督(62)の名前が球団内部で膨らんでいます。平田2軍監督率いる若虎は今季、ウエスタン・リーグ73試合を消化した時点で43勝27敗3分けの首位。昨季も同リーグで優勝し、ファーム日本選手権(2021年10月9日・ロッテ戦=3対2・サンマリンスタジアム宮崎)ではファーム日本一。同監督は2軍監督に3度、1軍ヘッドコーチも2度歴任するなど、今の戦力を醸造した功労者です。近年の編成方針を熟知しており、「チーム造りの継承」が最優先事項ならば適任者ですね。球団内には若返りを図るべき…との意見もありますが、今季も若手育成で結果を出している同監督の「昇格案」が本社-球団内で熟考中であるのは間違いない情勢ですね。

■2位浮上も視野

ペナントレースの流れは今後、どのような展開になるのでしょうか。阪神は開幕ダッシュに大失敗し、開幕9連敗を含む、開幕17試合は1勝15敗1分け。もう絶望的な数字から2022年シーズンは始まりましたね。それが、ジワジワと戦力を整え、6月は14勝8敗1分け。7月に入っても好調をキープし、17日の中日戦(甲子園球場)に勝った段階で8勝4敗。この約1カ月半で22勝12敗1分けですよ。

「開幕直後は戦力的には守護神スアレスが抜けた穴が埋めきれず、まさにスアレス・ロスがチームに大きく影響したんだ。抑え候補のケラーを見切り発車的に起用して失敗したダメージが大きかった。それと例の矢野監督の今季限り発言でチーム内には動揺があったんだ。それが、戦いながら徐々に戦力を整備し、選手の気持ちも落ち着いたのが大きい。元々、投手力を中心にした戦力は他球団以上のものがある。冷静に戦えば、今後も好調を持続できる」と阪神OBのひとりは話していました。

89試合を消化した時点では42勝45敗2分けの借金3ですが、投壊状態の巨人を追い抜いて4位に浮上。2位の広島ともわずか1ゲーム差ですから、首位・ヤクルトを肉薄する2位浮上も見えてきました。前回のコラムでも書きましたが、シーズン3位以上で終わるならば、矢野監督は在任4シーズンすべてで3位以上です。これは87年目を迎える阪神球団の監督史でも、もっとも安定した成績です。

ただ、最終成績がたとえ奇跡的な逆転優勝だったとしても、2位や3位だったとしても、春季キャンプ前日の1月31日に「今季限りでの退任」を表明した指揮官は今季限りでユニホームを脱ぎます。これは確定事項であり、阪神電鉄本社や球団首脳は2023年の来季、新監督の人選を進めなければなりません。

■岡田、藤川の名前も

さまざまな情報は飛び交っています。阪急阪神ホールディングスのトップ、角和夫代表取締役会長兼グループCEOと有力候補として注目される阪神OBで元監督の岡田彰布氏が5月上旬に〝極秘ゴルフ〟なるものを行い、その場で「監督就任要請」があった⁉という一部情報もありました。岡田氏は2004年から5シーズン、阪神監督を務め、2005年には87勝54敗5分けでリーグ優勝を飾りました。在任5シーズンで年間80勝以上を記録したシーズンが3度もあります。

実績としては申し分はなく、もし来季の新監督として招聘(しょうへい)されるならば、15年ぶりの阪神監督復帰です。ただ、これほどの実績十分な有力OBがなぜ?この間に3度(真弓監督→和田監督、和田監督→金本監督、金本監督→矢野監督)もあった監督交代劇で監督に復帰しなかったのでしょうか…。不思議といえば阪神の7不思議といっても言いぐらいですね。

さらに、チームの周辺では「一気に若返りを図るべきだ」という声もありますね。投手陣もそろってきたし近本、大山、佐藤輝らドラフト1位入団組も主軸に育ってきました。2020年に現役引退し、昨季から球団のスペシャル・アシスタントを務める藤川球児氏への期待感も湧き上がっています。まだ41歳(7月21日で42歳)ですが、野球理論には定評があり、リーダーシップも感じさせます。間違いなく球団にとっては将来の幹部候補生です。取って置きの監督候補です。

■球団内部から待望論

こうした状況の中で、球団内部から「待望論」が出ているのが平田勝男2軍監督なのです。今季もファームは73試合消化した時点で43勝27敗3分けの首位。昨季もウエスタン・リーグを制してファーム日本選手権にも勝ちました。2軍なのでチーム成績は関係ありませんが、3度目の2軍監督就任後(2019年~)、若手を鍛え上げ、次々と1軍に押し上げているのも事実です。

実は来季監督が「内部昇格」になるのでは…という情報は6月15日に行われた阪急阪神ホールディングスの定時株主総会後から、ジワジワとチーム周辺に流れています。それはある株主と谷本修取締役オーナー代行(57)との質疑から発生しているのです。

株主総会の質疑で声をあげた株主の一人は「次の監督は誰や?」と直球質問。答えた谷本オーナー代行は「ようやくチームとして顔となる選手、軸となる選手が投打ともにドラフト上位の選手が名を連ねてくれるようになりましたので、そこは継承していきたい。そうならないと本当の強さは出てこない。交流戦の最後は3番(近本)、4番(佐藤輝)、5番(大山)が全部ドラフト1位。25年間でたぶん初めてだと思う」と話しました。

株主総会で、株主に答えた会社役員の言葉は極めて重いですね。仮に返答とは全く違う経営方針をとり、タイガースが低迷するなどして、阪急阪神ホールディングスの経営に実害を及ぼすならば、これは株主代表訴訟の対象にもなるでしょう。ひとりの新聞記者への答えとは〝重み〟が全然違います(笑)。

そうした観点で見るならば、谷本オーナー代行は「次期監督の候補」は「そこ(現状のチーム造りや戦力編成)の継承」と言い切ったわけです。外部の大物監督を招聘するならば、株主との〝公約〟を具現化するわけにはいかない事情が出てきます。外部からの大物監督ならば「自分の任期中に勝ちたい」となり、どうしてもFA補強や大物外国人選手の獲得を求めてきます。「そこの継承」が極めて難しくなるわけです。

こうした背景もあり、阪神の2軍監督に3度、1軍のヘッドコーチを2度も歴任。指導者としての経験が豊富であり、ここ数年の球団のチーム編成方針を熟知している平田2軍監督を推す声が球団内部で膨らんでいるわけですね。

平田2軍監督は1985年(昭和60年)のリーグ優勝、球団創設初の日本一に輝いたときの主力メンバーです。堅実な守備力には定評があり、吉田義男→藤田平に次ぐ、虎の名遊撃手として球団史に名前を刻んでいます。阪神OBへの〝受け〟もよく、最有力候補者として名前が浮上しても、チーム内外にアレルギー反応はないでしょう。

まだ真夏なのに、何をおっしゃるウサギさん…ですかね。でも、もう2カ月後には〝政権交代〟の確実な足音が聞こえてくるはずですね。水面下では人事は動き始めているのです。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘、星野仙一監督招聘を連続スクープ。


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