令和4年度の最低賃金をめぐる労使の攻防が熱を帯びてきた。円安やウクライナ危機による原材料価格の高騰で物価高が進み、非正規労働者らの生活不安を軽減するため大幅な増額を求める声が強い。ただ、景気の先行きは険しく、経営側は引き上げありきの議論を警戒する。賃金水準全体の底上げなしに最低賃金だけを増やしても、逆に〝貧困化〟を加速する懸念すらあり、冷静な議論が必要だ。
「食料品や光熱費の値上げが止まらず、低所得の人ほど大きな影響を受ける」
全労連の衛藤浩司常任幹事は6月末、厚生労働省前で行った集会でこう述べ、最低賃金の大幅引き上げを訴えた。全労連調査では、25歳単身者が人間らしく暮らすために必要な生活費は月額23万円程度、時給換算で1500円に上る。物価高が家計を直撃している今年はさらに負担感が重い。