先進国と新興国、物価高など溝深く G20機能不全

インドネシアのバリ島で16日閉幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、4月の前回会合に続いて共同声明を取りまとめることができなかった。議題となった世界的な物価高や途上国の債務問題などで、西側諸国とロシア・中国の溝を埋められず、双方の対立と距離を置くその他の新興国とも足並みがそろわなかったためだ。世界経済の課題がかつてなく山積する中、G20は事実上の機能不全に陥っている。

「一刻も早く、G20で経済協力に集中できる環境を実現する必要がある」

鈴木俊一財務相は16日、バリ島での記者会見でこう述べ、G20の足並みの乱れに懸念を示した。

会議の焦点は世界的な物価高対応だった。ロシアのウクライナ侵攻後、エネルギーや食料など原材料価格の高騰で世界的にインフレが加速した。国連によると2億7600万人が深刻な食料不安に直面している。

だが、非難の応酬で議論は深まらなかった。米国のイエレン財務長官は「この会合にプーチン体制の代表の居場所はない」とロシアのオンライン参加に不快感を示し、ロシアは米欧日による経済制裁が物価高の原因だと反発。制裁に加わらないインドはロシア産原油を石油製品に精製して輸出する「オイルロンダリング(原油洗浄)」の疑惑すらあり、ロシアを巡るG20各国の思惑は交錯している。

スリランカの財政破綻で改めて浮き彫りになった途上国の深刻な債務問題でも溝は埋まらない。スリランカはインフラ整備で中国から多額の資金を借りて財政難に陥り、港湾権益を譲渡するなど〝債務のわな〟に陥った代表的な国だ。

西側諸国は途上国の債務の減免などの救済措置を講じてきたが、前提となる融資の実態開示に最大の貸し手である中国が消極的な態度を続け、打開のめどが立たない。コロナ禍の長期化で途上国の財政難は深刻化しており、世界経済の大きなリスクに浮上している。

議長国インドネシアのムルヤニ財務相は会議で「4月の前回会合も非常に困難だったが、より深刻になっている」と警告した。戦争と物価高は新興・途上国だけでなく先進国の経済もむしばみ、各国は信頼できる友好国でサプライチェーン(供給網)を固める動きを強めるなど、第2次世界大戦の遠因にもなった経済のブロック化が進む。国際協調体制が崩壊すれば、世界は次の危機へと進みかねない。(加藤園子)

G20財務相会合、共同声明見送り 露侵攻で対立続く

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