その半生には、死の影がつきまとう。安倍晋三元首相(67)を銃撃した山上徹也容疑者(41)は父親と兄を、それぞれ自殺で失っている。
宗教が落とす暗い影
4歳のとき、父親が当時住んでいた大阪府東大阪市で、マンションから飛び降りた。京都大を卒業した優秀な父は、トンネル工事を請け負う建設会社の役員だった。母親は当時、山上容疑者の妹を妊娠中。1つ年上の兄は小児がんを患い、その数年後にがん摘出のための開頭手術も受けた。現世の理不尽を前に、母親は新興宗教に救いを求める。事件の動機につながる統一教会(現・世界平和統一家庭連合)だった。教会側によると、母親の入信は平成10年ごろとされるが、弁護士だった山上容疑者の伯父によれば入信はその7年前。幼い子供3人のために残しておくべき夫の死亡保険金5千万円を教会につぎ込んだ。父の死と母の宗教への傾倒が、幼少期の山上容疑者の心に暗い影を落としていく。
「おとなしい性格で、自分から積極的に話しかけるタイプではない。でも、運動神経もいいし、クラスで1、2を争うほど頭も良かった」