日本の戦後史という大きな時間軸においても特筆すべき「2秒間」であったろう。
8日午前11時31分、1回目の銃声。右手にマイクを持ち、左のこぶしを握りしめて演説していた自民党の安倍晋三元首相(67)の動きが一瞬固まる。弾は当たっていない。振り上げたこぶしもそのままに、首を左にひねり音のした方を振り向いた。この間、2秒とコンマ何秒か-。
ダーンという再度の轟音(ごうおん)。周囲の人間を白煙が覆う。安倍氏は体をくの字に曲げ、崩れ落ちるように右脚から演台を下り、左脚を送り出したところで右膝をつく。そのままゆっくりとあおむけに倒れた。喉仏の近くに小さな穴が開き、白いシャツの胸部が血でにじんだ。見る見る安倍氏の両眼から光が失われ、白目をむいたという。懸命の心臓マッサージも、意識が戻ることはもうなかった。