主張

安倍氏の警護 大失態の検証を徹底せよ

会見する奈良県警の鬼塚友章本部長=9日午後6時8分、奈良市の奈良県警本部(鳥越瑞絵撮影)
会見する奈良県警の鬼塚友章本部長=9日午後6時8分、奈良市の奈良県警本部(鳥越瑞絵撮影)

安倍晋三元首相が銃撃された事件で、二之湯智国家公安委員長は12日、警備を検証するための態勢を立ち上げるよう警察庁に指示したことを明らかにした。

検証を重ねても安倍氏は帰還しない。それでも反省点は徹底的に洗い出さなくてはならない。それは大失態を犯した警察当局の責務である。

安倍氏は8日、奈良市で参院選の応援遊説中に山上徹也容疑者から手製銃で至近距離の背後から銃撃され、失血死した。

奈良県警の鬼塚友章本部長は会見で「警護警備に問題があったことは否定できない」と述べた。松野博一官房長官は「現場の対応のみならず警察庁の関与のあり方も含め、警護警備には問題があったと認識しているとの報告を受けている」と説明した。

警護の成否は、警護対象が死亡すれば0点である。重大な結果が生じた以上、警備に問題があったことはすでに明らかだ。どこにどんな問題があったのか。反省点を速やかに検証すべきである。

疑問点は多々ある。

なぜ、やすやすと山上容疑者に背後からの接近を許したのか。

1発目の発砲から致命傷となったとみられる約3秒後の2発目まで、警備陣はなぜ安倍氏の防御に動くことはできなかったのか。

山上容疑者は犯行の約1時間半前から現場を徘(はい)徊(かい)する姿が確認されている。不審者として職務質問の機会はなかったか。

帯同する警視庁警備部警護課員(SP)1人という態勢に問題はなかったのか。

奈良県警による警備実施の計画を、警察庁はどこまで把握し、確定していたのか。適切な指示、指導は行われたのか。

選挙遊説の警備は最も難しいとされる。警護対象を選挙カーから降ろさず、周囲を警備陣で十重二十重に固めれば襲撃は防げるが、それは候補者が嫌う。不特定多数との接近、接触は警備側が嫌うが、票の獲得のためには欠かせない。だからこそ綿密で詳細かつ、流動的な事象に対応できる柔軟な警備計画が必要となる。襲撃時の映像からは、態勢が十分なものだったとは到底みえない。

そこに、日本社会は平和だという過信はなかったか。大きな反省点は警察当局にだけではなく、社会全体の緩みやゆがみにもあったのではないか。

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