母の入会契機、生活暗転 寄付繰り返し破産 安倍氏銃撃の容疑者

送検される山上徹也容疑者=奈良市(安元雄太撮影)
送検される山上徹也容疑者=奈良市(安元雄太撮影)

山上徹也容疑者は、母親が入会した世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に寄付を繰り返し、経済的に破綻したことから教会側に恨みを募らせる中で、「関係がある」と身勝手に思い込みを強めた安倍晋三元首相の殺害に走ったとみられている。容疑者がゆがんだ犯行に及ぶ過程には、教会側をめぐる動きや母の活動と重なる実態も浮かぶ。

教会側や関係記録などによると、母親は親族の死去に伴い、平成10年に建設会社の経営を引き継いだ。そのころ、教会に入会。一方、山上容疑者は8年に奈良県内の公立校に進学した。県内トップクラスの進学校だった。

だが、生活は暗転する。寄付を繰り返した母は14年に破産。山上容疑者は14年8月に任期制自衛官として海上自衛隊に入った。

母親は破産後も活動を続けた。今月11日に会見した家庭連合の田中富広会長は「高額の献金をする人は、かつても、今もいる。本人の意思で行うもの。ノルマはない」と説明。母親の破産は、今回の事件後に知ったとし「その後、高額献金を要求した事実は、記録上、残っていない」と述べた。

教会は、1954(昭和29)年に韓国で誕生。日本では80年代以降、高価な壺や印鑑などを購入させる霊感商法が社会問題になった。90年代には有名人らの入会や合同結婚式も話題となった。

こうした中、教会側の霊感商法に関する裁判で違法性を認める判決が出されるなどし、教会側は平成21年、献金トラブルを認め、コンプライアンス順守を表明した。田中会長は「それ以来13年間、末端に至るまでコンプライアンスを徹底してきた。当法人も大きく献金に対する姿勢は変わってきたと思っている」と話した。

その21年ごろから、母親は教会側と距離を置き始め、活動を離脱した。一方、山上容疑者は17年に任期満了で海自を退職し、複数の企業で派遣社員として勤務。令和2年秋ごろからは京都府内の工場に派遣され、フォークリフトの操作などを担当していた。工場の責任者は第一印象について「おとなしいが常識がある」などと話していた。

だが、母子の環境に再び変化が生じた。

平成30年~令和元年ごろに母親が教会員と再び連絡を取り始め、山上容疑者は安倍氏が教会友好団体主催の行事にビデオメッセージを寄せた3年9月ごろ、安倍氏の殺害を決意したとみられる。

母親が月1回ほど教会側の行事に参加するようになった今年初めごろからは、山上容疑者は同僚らとの口論や欠勤を繰り返すようになり、5月に退職、7月に事件を起こした。捜査関係者は、母親の宗教活動が、ゆがんだ犯行動機につながったとみている。

12日に会見した「全国霊感商法対策弁護士連絡会」代表世話人の山口広弁護士は「(山上容疑者の)凶行は許せるものではない」と強調しながらも「(母親が)破産しており、明らかに過度の献金。家族がどれだけ苦しいかは理解してほしい」と話した。

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