「安倍元首相、撃たれる」の第一報から、通信社電などの速報を慄然たる思いで目にしながら、一命だけは取りとめてほしいと私は願った。1963年にケネディ米大統領が暗殺されたときの外電の第一報は「ケネディ撃たる」、次いで「撃たれたのはダラス」など至急報の連続だった。米国民は助かってほしいと祈ったが、天は非情だった。日本は安倍晋三というかけがえのない人物を最も必要としている時代に失ってしまった。痛恨に堪えない。
大局から判断した外交・内政
安倍氏の外交、内政を一言で表現しろと言われたら、私は「戦後レジームからの脱却」だと答える。ここから「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」姿勢が登場した。外務大臣が無能なのか外務省に責任があるのか定かではないが、外部で観察するかぎりでは二国間外交、それも相手国を刺激しないことに徹底した外交は「チャイナ・スクール」「土下座外交」という固有名詞まで生んだ。戦略性を帯びる外交には国際情勢を大局から判断する姿勢が不可欠だ。