岸田文雄首相(自民党総裁)は11日、参院選で大勝したことを受けて記者会見を開き、憲法改正に向けた「民意」が示されたとして、国会で改憲議論をリードする決意を示した。「できる限り早く(国会)発議に至る取り組みを進めていく」とも語った。首相は8月下旬にも内閣改造・党役員人事を行う方向で調整しており、松野博一官房長官や林芳正外相を留任させる案が有力となっている。
首相は会見で、選挙戦の最中に凶弾に倒れた安倍晋三元首相の功績に触れ、「思いを受け継ぎ、(北朝鮮による)拉致問題や憲法改正など、自身の手で果たすことができなかった難題に取り組む」と強調した。
自民が単独で改選過半数に達する63議席を獲得したことに関しては、「岸田内閣への信任だけでなく、安倍氏のこの国への思いを正面から受け止め、全力で仕事を進めよと、叱咤(しった)激励をいただいた」とも指摘した。
さらに、新型コロナウイルスや物価高などの課題は「数十年に1度あるかないかの大きなものだ。戦後最大級の難局にある」と説明した。物価高対策をめぐっては、週内に政府の対策本部を開き、令和4年度予算の予備費も活用しながら対応を進める考えを示した。
コロナ対応は入院病床の確保やワクチン接種の推進を図りつつ、「平時への移行の道を慎重に歩んでいく」と語り、感染拡大防止と経済社会活動の両立を図りながら取り組む方針を強調した。
参院選の争点となった安全保障政策では、「防衛力を5年以内に抜本的に強化する」と重ねて訴えた。ただ、必要な予算規模や財源は語らず、「(防衛力強化の)中身と予算、財源は一体で議論を進め、年末に向けて具体化して明らかにしていきたい」と述べた。
今後の焦点は、政権基盤が安定した首相がどのような人事を行うかに移る。首相は「今後の政治日程を確定させた上で、タイミングや内容を考える」と語った。自民党内では、昨年の総裁選で安倍氏の支援を受けた高市早苗政調会長や安倍氏の実弟の岸信夫防衛相らの処遇に注目が集まっている。