【ワシントン=大内清、北京=三塚聖平】ブリンケン米国務長官は9日、中国の王毅(おうき)国務委員兼外相とインドネシア・バリ島で会談し、米中の競争が紛争に発展しないよう対話を維持することの重要性などを確認した。両氏の対面会談は昨年10月以来。米中間ではバイデン大統領と習近平国家主席が近く電話かオンライン形式で会談する方向で調整が進んでいるとされ、今回の会談はその地ならしの意味合いを持つ。
ブリンケン氏は「外交において対面に勝るものはない。米中関係は複雑かつ重要であり、話し合うべきことは多い」と高官レベルでの協議の意義を強調。両者は会談後に昼食もともにし、ロシアによるウクライナ侵攻や台湾などの地域情勢、人権問題などで意見を交わしたとみられる。
インフレが進む米国では、経済界を中心に、中国との関係を対立的な競争ではなく互恵的なものに再構築するべきだとの声が目立ち始めており、バイデン政権が対中関税の一部を月内にも見直すとの見方は強い。中国側としても、台湾問題などでは「核心的利益」を守るとの立場を崩さない一方、今秋に共産党大会を控える中で対米関係を安定させたいのが本音だ。
王氏は会談で、台湾問題に関して「米側は言動を慎み、『台湾独立』勢力にいかなる誤った信号も発してはならない」と発言。米側に対して「台湾海峡の平和を台無しにする破壊的な過ちを犯してはならない」と求めた。対中関税についても「できるだけ早く撤廃し、中国企業に対する一方的な制裁をやめるべきだ」との考えを伝えた。
会談はバリ島で開かれた20カ国・地域(G20)外相会合にあわせて開かれた。