安倍晋三元首相は「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」という理念を掲げ、世界の各地域で日本が主体的な役割を担う外交を展開した。その象徴といえるのが、台頭する中国を念頭に、自由と民主主義に基づく国際秩序の維持を目的とした「自由で開かれたインド太平洋」構想だ。この構想は世界のリーダーから支持を得て、日本の国際社会での評価と存在感を高めることとなった。安倍外交の業績を振り返る。
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米国にとり安倍氏の最大の遺産はまず、民主党のオバマ政権、共和党のトランプ政権と良好な関係を築きつつ日米同盟を「かつてないほどの高み」(ブリンケン国務長官)に引き上げたことだ。同時に自ら提唱した「自由で開かれたインド太平洋」を欧州など他の民主主義諸国を糾合した共通目標として推し進めたことにある。