《ハナ。ハナ。アカイ ハナ。》。背景の挿絵は佛桑華(ぶっそうげ)(ハイビスカス)と熱帯の家。次のページは、《ウミ。ナミ。》。挿絵は海をゆく船と鳥…。これは、日本統治下の南洋群島で現地島民児童が通う公学校(小学校)で大正14(1925)年から使われた『国語読本』(第2次)の冒頭部分。つまり小学1年生が初めて国(日本)語を学ぶ際に使われた教科書だ。
発行は、南洋群島の統治官庁である南洋庁。編者は国語教員で内地(日本)や日本統治下の朝鮮で「国語読本」編纂(へんさん)に携わった文部省(当時)図書編輯(へんしゅう)官、芦田惠之助(あしだ・えのすけ)(1873~1951年)であった。
『第二次南洋群島国語読本教授書』(南洋庁編)には最初に佛桑華を取り上げた意図が書かれている。《(「ハナ、アカイハナ」は)南洋に年中咲いているという佛桑華をとりました。目がさめるように美しい》。その上で、外国人児童に初めて国語を教授することは、かなり困難なことであり、身近な植物を題材とし、《「これ何ですか?」と繰り返すことが大事》なのだ、と強調した。