熱中症で倒れる生徒、記者の違和感 高校野球宮城大会開会式

倒れた女子マネジャーのもとに駆け付けた救急隊員ら=5日午前、楽天生命パーク宮城(仙台市宮城野区)
倒れた女子マネジャーのもとに駆け付けた救急隊員ら=5日午前、楽天生命パーク宮城(仙台市宮城野区)

楽天生命パーク宮城(仙台市宮城野区)で5日に行われた第104回全国高校野球選手権宮城大会(主催・宮城県高校野球連盟、朝日新聞社)の開会式を取材した。入場行進から県高野連幹部のあいさつ、選手宣誓に至るまで所作が徹底され、全体的に統制された進行が印象に残る。日光が直射する球場に立ち続け、式が終わるや体調不良を訴え、倒れこむ生徒の姿も。高校野球〝門外漢〟の身として違和感を覚える光景でもあった。(奥原慎平)

「仲間と励まし合った日々。野球が心の距離をつないだ。この夏も応援したい君がいる」

5日午前10時。スタジアムの静寂を司会の高校生の声が打ち破り、邪気を払うように10発近い火薬の破裂音が鳴り響く。

選手の入場行進が始まった。昨年大会の覇者・東北学院を先頭に70校64チームが順々に隊列を組んで1塁側から本塁、そして3塁側へ行進していく。スタッフらしき男性が本塁付近から観客席を向き、手をたたくと、会場から手拍子がわき起こる。

直立不動の審判団をはじめ、県高野連関係者が見つめる中、選手たちは掛け声を掛け合う。一糸乱れぬ動作を心掛けているようだ。頭から否定するものではないが、全体的に軍隊調の雰囲気を想起させる。

行進を終えたチームに目をやると、外野付近に整然と並び、他チームの入場を待っている。スマートフォンで確認した気温は27度。さほど高くはないが、大半の生徒がマスクをつけているのが気になる。厚生労働省は屋外で会話をしないなら、人との距離を2メートル確保できなくても、マスク着用は必要ないとしている。熱中症予防のためだ。

約22分かけ、入場行進は終了した。待機していた選手やマネジャーが外野から本塁側に移動し、表彰式や国旗の掲揚などプログラムが進んでいく。君が代を歌い上げた常盤木学園音楽科3年の大宮みゆらさんの〝至高〟の歌声が余韻を残す中、1人の選手が集団を離れ、1塁ベンチに入っていった。

暑さで体調を崩したようだ。記者が声をかけると「大丈夫っス」とバツの悪そうな表情を浮かべる。すぐに救護役の職員らが駆けつけた。

グランドでは県高野連の幹部が整列した選手を前に声を張り上げていた。

「選手の皆さん、おはようございます!」

ワンテンポを置いた後、「‥ございまっス!」と野太い声が返ってくる。幹部は満足そうに「いいね」。首都圏での新型コロナウイルスの感染状況の説明、医療従事者への感謝を呼びかけ、「選手の皆さん、頑張ってください」と約6分のスピーチを締めくくる。

選手宣誓を終えると、涼しい風も吹き始める。約45分の開会式が幕を閉じたが、それでも異変が生じる。

崩れかけた集団の中から、顔面蒼白(そうはく)になった2人の女子マネジャーが別々にスタッフに抱えられ、1塁ベンチに向かってくる。1人はベンチ前で倒れこんだ。

そばでは宣誓を終えた選手への記者団のインタビューが始まった。目を輝かせてハキハキと質問に答える選手の声が響く中、ベンチで横になった女子マネジャーは力なく崩れている。

1千人近い生徒を長時間、グランドに立たせたら、熱中症で倒れる者もでるだろう。健康管理体制はどうなっているのだろうか。朝日新聞社仙台総局の幹部に尋ねると、県高野連の松本嘉次理事長を紹介してくれた。

「体調管理は個人。こちらの管理じゃない。倒れない子もいる。高野連の対応とすれば、ベンチで冷やしたタオルを用意し、それぞれに先生を配置し、倒れたら、すぐに対応している。熱中症対策は行っている」

--熱中症で倒れることのない環境が必要なのでは

「倒れないようにするといっても、われわれが分かるわけないじゃないですか。誰が倒れる、倒れないって分かりますか」

--いや、炎天下で生徒を長時間立たせること自体を回避した方がいいのでは

「それはもちろんだが、開会式は例年よりも熱中症対策として40分短縮した。だから、選手は1人も倒れていない。(倒れたのは)プラカードを持つマネジャーだけだ」

選手1人が体調不良を訴えた件はタイムラグがあったようで、取材当時は松本氏に報告があがっていなかった。

県高野連の事務局によれば、開会式では毎年熱中症で倒れる生徒が出ており、今回の3人は決して多い数字ではないという。

松本氏に取材する直前、倒れた女子マネジャーらのもとに救急隊員が到着し、しびれの有無や年齢などを確認していた。ショックのためか、マネジャーは涙ぐみながら答えている。目元をハンカチで拭きながら隊員と会場を後にした。

ある程度、合理性を超えた指導教育も許容されていいだろうし、開会式の在り方を巡っては、県高野連や朝日新聞社などが育んできた伝統に起因するところも大きいのだろう。たった1日取材しただけの身として、偉そうなことは言えないが、時代と乖離(かいり)した在り方を押し付けてはいないか。後味の悪さがぬぐえなかった。

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