新型コロナウイルス禍で露呈した「行政のデジタル化」の遅れを取り戻すべく、菅義偉政権の肝いりでデジタル庁が発足してから、7月1日で10カ月が経過した。ワクチン接種証明書アプリなど国民生活をデジタルで便利にするという目標につながる成果も出始めている一方、何をしている役所なのか国民に分かりにくい状況が続いている。行政のデジタル化という目に見えにくい業務を担っているという事情もあるが、各省庁から人材を集めたことによる組織体制の弊害を指摘する声も聞かれる。
マイナンバーカードを「令和4年度までにほぼ全国民へ普及させる」目標に向け、マイナンバーカード取得者に買い物などで使えるポイントを付与する「マイナポイント第2弾」が6月30日、本格的に始まった。新規カード取得者は、カードの保険証利用登録や公金受取口座の登録と合わせて最大2万円分のポイントを獲得できるため、カード普及の一助になるとみられるが、デジ庁幹部は「マイナンバーカードのメリットがマイナポイント以外に分かりにくいのが問題だ」と指摘する。
政府がマイナンバーカード普及を目指すのは、行政のデジタル化の恩恵を受けるためにカードは不可欠と位置づけているためだ。しかし、例えば行政のデジタル化の一つである、カードを保険証として利用できるように登録すると、薬剤情報、特定健診情報が把握できるようになるなどのメリットはあるが、マイナポイント獲得という目に見えたメリットに比べれば分かりにくいといえる。