龍(りゅう)ヶ馬場(ばば) 五
「久しいな。御坊」
霧の森の底で、隆兼(たかかね)は無理に笑む。堯恵(ぎょうえ)は悲しげに言った。
「今朝方、恐ろしい鬨(とき)の声を聞き、さて合戦はどうなったかと案じつつ、防州勢の猛威天をおおうばかりであったゆえ、一定(いちじょう)打ち勝つと思うたのですが……。とても現(うつつ)とは思えませぬ」
「今日はたのみたき儀があってお呼びした」
龍(りゅう)ヶ馬場(ばば) 五
「久しいな。御坊」
霧の森の底で、隆兼(たかかね)は無理に笑む。堯恵(ぎょうえ)は悲しげに言った。
「今朝方、恐ろしい鬨(とき)の声を聞き、さて合戦はどうなったかと案じつつ、防州勢の猛威天をおおうばかりであったゆえ、一定(いちじょう)打ち勝つと思うたのですが……。とても現(うつつ)とは思えませぬ」
「今日はたのみたき儀があってお呼びした」