5月の毎月勤労統計調査では実質賃金が2カ月連続で減少し、急激な物価高に現金給与総額(名目賃金)が追い付かない状況が改めて浮き彫りになった。今年1月の調査手法変更で賃金の上昇が過大評価され、実勢の実質賃金は公表値より下落幅が大きいとの見方もある。ウクライナ危機に伴う原材料価格の高騰で年内の実質賃金は1%台のマイナスが続く恐れがあり、消費の減退が懸念される。
実質賃金の減少幅(1・8%減)は、新型コロナウイルス流行初期に残業代やボーナスが減って賃金水準が大幅下落した令和2年6月(2・1%減)以来の大きさ。現金給与総額はコロナ禍で落ち込んだ昨年までの反動増で5カ月連続プラスとなったにもかかわらず、食料品やエネルギーなどの物価高で懐が冷え込んだ。
統計のカラクリで、実際の影響度はさらに大きいとも指摘される。ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査部長によると、毎月勤労統計は今年1月、毎年行うサンプル(調査対象企業)の入れ替えと、数年に一度行う産業構造や労働者数の変化の反映(ベンチマーク更新)を併せて実施した。