がん電話相談から

卵巣がんⅢc期の治療 まず試験開腹を行い化学療法を

Q 54歳の母についての相談です。腹部に「まるで妊婦みたいな膨満(ぼうまん)感がある」とのことで、医療センターで検査を受けたところ、左右の卵巣と大動脈周辺のリンパ節が腫れ、腹水がたまり、広範囲な腹膜播種(腹膜内に散らばる形での腫瘍の転移)が見つかりました。腫瘍マーカーの検査結果は、CEAやCA19―9は正常範囲だったものの、CA125は高値でした。主治医は卵巣がんのステージⅢcと診断。まず試験開腹術を行うと告げられました。試験開腹術では何が分かるのですか。根治手術は無理なのでしょうか。

A 試験開腹術は治療方針を決めるために必要になります。卵巣がんの場合、患者の80%以上に抗がん剤が効くとされ、適切な戦略で治療すると、ステージⅢで60%、Ⅳで35%くらいの5年生存が期待できます。

試験開腹術では、腹腔内をよく観察・記録した上で、安全に採取できる病巣を切除します。次に切除した病巣の病理検査で卵巣がんのサブタイプ(明細胞がんや粘液性腺がんなどの分類)の診断と、相同組み換え修復欠損(HRD)やBRCA1、2遺伝子異常などを調べるための遺伝子解析も実施し、適切な分子標的薬選択の一助にします。

今回は高悪性度漿液(しょうえき)性腺がんの可能性が高く、抗がん剤がよく効くと思われるので、侵襲(体へのダメージ)の度合いの高い根治手術を避けたいのでしょう。

卵巣がんのうち抗がん剤が効きにくいサブタイプと分かれば、消化器外科・泌尿器科と合同で検討して、根治手術を早期に行うこともあります。

Q 試験開腹術後に化学療法を3~4サイクル行い、状態を再評価して手術をすると言われました。

A 腹腔鏡による試験開腹術の侵襲は軽いので、術後2週間からTC療法(抗がん剤のパクリタキセルとカルボプラチンを併用する化学療法)を3週間ごとに行います。腹水が再貯留せず、CA125が減少するとTC療法は有効と考えます。TC療法3~4サイクル後に腹腔内のがんの状態を再評価して、2度目の手術を計画します。

この手術で、肉眼的に病巣を残らず根治切除できれば、5年無再発生存は60%以上が期待できます。

Q 2度目の手術で根治切除ができた後は化学療法を続けるのですか。

A TC療法を3~4サイクル追加します。遺伝子解析でHRD陽性、BRCA1、2変異陽性であれば、がんの栄養血管形成を抑制する分子標的薬ベバシズマブ(商品名アバスチン)をTC療法と併用します。そして、TC療法終了後にポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)の働きを抑えるPARP阻害剤のオラパリブも長期併用投与します。HRDが陰性であれば、ベバシズマブは用いずに、PARP阻害剤(オラパリブかニラパリブ)を単独投与します。

Q 治療が計画通り進まなかったり再発したりする場合はどうなりますか。

A TC療法の効果が不十分だと、2度目の手術が不可能だったり、2度目の手術で病巣を取り残したりします。そこでTC療法を変更して、新たな治療戦略を立てねばなりません。

プラチナ抗がん剤は効かないと考えて、ドキソルビシン(商品名ドキシル)などの非プラチナ抗がん剤を単独で用います。そしてPARP阻害剤は用いずにベバシズマブを併用します。腹水再貯留で再発する場合にはベバシズマブが有用です。

回答は、がん研有明病院の瀧澤憲医師(婦人科前部長)が担当しました。

がん研有明病院の瀧澤憲医師 (婦人科前部長)
がん研有明病院の瀧澤憲医師 (婦人科前部長)

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