防衛省は4日、中国海軍とロシア海軍のフリゲート艦各1隻が相次いで尖閣諸島(沖縄県石垣市)の領海外側にある接続水域へ入ったことを明らかにした。領海侵入はなかった。中露艦艇がほぼ同じ時間帯に同諸島接続水域に入るのは平成28年6月以来。外務省は在日中国大使館に重大な懸念を表明した上で抗議した。中国の領有権主張のための軍事活動である可能性もあり、防衛省は両国の意図を分析している。
海上自衛隊は4日午前7時44分ごろ、中国海軍のフリゲート艦1隻が尖閣諸島の魚釣島南西の接続水域に入るのを確認。同艦は午前7時50分ごろ、西南西に向けて接続水域を出た。海自護衛艦「あぶくま」が警戒監視に当たった。直前の同日午前7時5分ごろには露海軍のフリゲート艦1隻が魚釣島南西の接続水域に入り、中国艦が出た後の午前8時16分ごろに出た。
露艦は東シナ海を北東へ進んでいた台風4号による高波を避けるため、尖閣諸島・魚釣島南西の接続水域へ入った可能性もある。中国艦は露艦に対応する形で動いており、防衛省は中国艦の進入は露艦への警戒・監視活動目的だった可能性もあるとみる。
ただ、日本周辺では中露両軍が連携を強めている実態がある。5月には中露両空軍の爆撃機が日本海を編隊飛行したほか、6月には中国艦が露艦の後を追う形で艦艇計8隻が日本列島を周回した。
露艦の接続水域進入は中国艦が同海域に入る大義名分を与えるため、事前に示し合わせた上で行われた可能性もある。中国側が「露艦に警告した」と見せかけ、尖閣諸島の「実効支配」を印象付けるためだ。
これまでも尖閣接続水域内に入った露艦に対し、中国海警船が領有権を主張するケースもあった。今回は露側に「警告」を与える中国の船が、海警船から軍艦に格上げされた形となった。尖閣をめぐる緊張関係は一層高まることとなる。
中国艦による尖閣接続水域への進入は平成30年6月以来で4回目となる。木原誠二官房副長官は4日の記者会見で「尖閣は歴史的にも国際法上もわが国固有の領土だ」と改めて訴えた。
今回、中露の連携の有無や目的は明確ではないが、防衛省幹部は「軍事衝突が起きかねない危険な行為だ」と話し、中露両軍の動きに警戒感を強めている。(市岡豊大)