近頃の政治家は「保守」という言葉をしばしば使う。ただ、保守が指すイメージは人によって異なり、あいまいだ。大きな変化を嫌うといった通俗的な意味ではなく、政治思想上の定義から再確認してみたい。
保守思想の嚆矢(こうし)とされる英国政治思想家、エドマンド・バークは、フランス革命を強烈に批判したことで知られる。彼は優れた人間の知性、理性によって社会が設計でき、素晴らしい世界が実現されるといった発想を嫌った。逆に、長年の風雪に耐えて形成された良識や伝統、慣習を重視した。その上で、現実と過去とのバランスを取りながら「永遠の微調整」を重ねることを理想とした。
背景には人間とは神のような超越者ではなく、不完全なものという懐疑心がある。もちろん、そのまなざしは自らにも向かう。自分自身も間違えているかもしれない。だからこそ、異なる意見に耳を傾け、合致点を探そうとする。保守は自由を貴ぶ。他者に寛容であり、自分の間違いを認識しつつ、合意を探る。「保守」を名乗る政治家の態度とは本来こうあるべきだ。