徴用工訴訟、韓国で官民初会合 賠償肩代わり案波紋

「徴用工」訴訟の解決に向けた官民協議体の初会合を前に、記者団の取材に応じる原告代理人弁護士ら=7月4日、韓国外務省庁舎前(時吉達也撮影)
「徴用工」訴訟の解決に向けた官民協議体の初会合を前に、記者団の取材に応じる原告代理人弁護士ら=7月4日、韓国外務省庁舎前(時吉達也撮影)

【ソウル=時吉達也】韓国最高裁が日本企業に賠償を命じたいわゆる徴用工訴訟で、韓国外務省は4日、原告関係者や有識者を交え解決策を話し合う官民協議体を設立し、初会合を開いた。差し押さえられた日本企業の資産が現金化される事態が迫る中、韓国政府は賠償を事実上肩代わりする「代位弁済」案などを検討。原告は反発を強めており、韓国国内での合意形成に向けたハードルは高い。

「会合を通じ、すでに内定している(解決)案に手続き上の正当性を与えようとしていないか」。4日、初会合を前に記者団の取材に応じた原告代理人弁護士らは、韓国政府に対する不信感をあらわにした。

協議体は韓国外務省の趙賢東(チョ・ヒョンドン)第1次官が主宰し、原告代理人や学者、元外交官らで構成。8月までに数回会合を開き、解決策についてそれぞれの意見を聞くという。しかし、原告側関係者の一部は出席を拒否するなど、初会合から暗雲がたれこめた。

原告側が警戒を強めるのは、韓国政府が日本側に提案する解決策の原案が、事前に流出したためだ。複数の韓国メディアは、日韓の企業、国民による募金を基に、日本政府や敗訴した日本企業が参加しない形で約300億ウォン(約31億円)規模の基金を設立、賠償金に充てる方針だと報道。韓国政府が賠償金を肩代わりし、将来的に日本側に支払いを求める形式の「代位弁済」案も浮上するなど、日本政府や当事者企業の関与を求めない解決策の検討が判明した。

こうした解決策は、日本側の理解を得やすい一方、「加害者に免罪符を与える」と主張する原告や韓国世論の反発は不可避だ。原告側は被告企業が裁判外協議に応じれば、その間現金化手続きを停止するとの「妥協案」を示しているが、日本側が受け入れる可能性は極めて低い。

協議体に参加する有識者の一人は「被告企業が自発的な形で新基金に参加し、間接的にでも関与するのが望ましい」と話す。

2018年の賠償命令から3年半余り。原告側が差し押さえた日本企業資産の売却命令は、早ければ今夏にも最高裁で確定するとの観測があり、解決案の協議に残された時間は多くない。日本政府は1965年の日韓請求権協定で「解決済み」との立場から、現金化に至れば制裁措置を辞さない構えで、さらなる関係悪化は避けられない。

韓国側は10日投開票の参院選終了後、早い時期に朴振(パク・チン)外相が訪日する予定で、日本側との協議が本格化する見通し。今回のタイミングで官民協議体を発足させたのは、「対日協議を控え、韓国政府が国内調整に取り組んでいることをアピールする狙い」(韓国側の有識者)もうかがわれる。

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