地球温暖化防止を目指す有志国などによる「気候クラブ」が年内に設立される見通しとなった。6月末に開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)の議長国、ドイツの構想を受けての動きである。
温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」では気温上昇幅を1・5度に抑える目標を掲げているが、現状では達成が困難視されている。
パリ協定の完全実施に向けて、G7を中核とする国や地域の有志連合の結束力でこれを支援しようという考えだ。
だが、気候クラブの設立をもってしても前途は多難であろう。
産業革命前からの気温上昇を1・5度にとどめるには、二酸化炭素の排出量を2030年時点で45%削減(10年比)しなければならないが、世界一の排出国・中国は30年まで排出量を増やし続けると宣言しているからだ。
気候クラブに関するG7声明では「主要排出国を含む関係国、G20メンバー、その他の途上国、新興国」に対してもクラブ参加への門戸を開く姿勢を示している。
中国を念頭に置いた呼び掛けだが、習近平政権は黙殺で対応するだろう。なぜなら同声明には「排出量の算定および報告メカニズムを強化し、国際レベルでカーボンリーケージに対抗する」という文言が含まれているためだ。
カーボンリーケージは、排出削減対策の強度差に起因する国家間での市場競争のゆがみや、排出源の海外移転による実効性低下を意味する用語である。
太陽光パネルをめぐる人権問題への批判も含まれているのは間違いないが、二酸化炭素の排出削減交渉は、国益をかけた経済戦争と表裏一体であることを忘れてはならない。
地球環境の保全という美点にのみ心を奪われていると国家的な損失をこうむることにもなる。
例えば、今回のサミットでは、日本が得意とするハイブリッド車への圧力がかかったようである。欧州自動車業界が注力する電気自動車へのなりふり構わぬ議長国の肩入れだった。
地球温暖化問題には科学の領域を超えて、国際政治もエネルギー安全保障の形で絡み、複雑の度を増している。気候クラブに背は向けられないが、岸田文雄首相にはこの点を十分に心得て対応してもらいたい。