ロシアによるウクライナ侵攻は、東部ドンバス地域(ルガンスク、ドネツク両州)全域の制圧を主目標に掲げる露軍がルガンスク州全域を掌握し、新たな局面を迎えた。ロシアは残るドネツク州を制圧した上で停戦に持ち込み、新たな支配地域を確定させる思惑との見方が強い。ただ、同州ではウクライナ軍の防衛線が維持されており、露軍の戦闘能力はこれから減衰していくとの分析もある。少なくとも短期間での目標達成は困難な見通しだ。
プーチン露大統領は「特別軍事作戦」の開始を宣言した2月24日の演説で、2014年から親露派武装勢力とウクライナ軍の紛争が続いてきたドンバスの「解放」と「住民保護」が目標だと主張。6月29日にも「目標は変わっていない。作戦完了の期限は設けない」とし、ドンバス掌握が至上命題だとする認識を示した。
苦戦が指摘されてきた露軍がここにきて東部でようやく前進できた要因には、敵の防御拠点を火砲で破壊した上で前進する「ロシアの伝統的戦術」(露軍事専門家)を徹底したことのほか、首都キーウ(キエフ)方面から撤退させた戦力を追加投入した点、米欧からウクライナに供与された兵器の効果がなお限定的であることなどが挙げられている。