金融政策、異例の舌戦 物価高・円安が負担 参院選

10日に投開票される参院選では、普段関心を集めにくい金融政策が異例の争点となっている。日本銀行の「異次元の金融緩和」が影響した急速な円安が、原材料価格の高騰に伴う物価高を助長し国民負担につながっているためだ。直近の物価上昇率は政府と日銀が目標に掲げる2%を超えているが、当初想定した賃上げと連動する景気の好循環には至らず、日銀は身動きが取れなくなっている。

「物価高の原因は原油高と円安だ。原油高を止めるのは難しいが、円安を放置するかが問われる。(金融政策を)いつ見直すのか」

公示前6月21日の与野党9党首による討論会で、立憲民主党の泉健太代表がまくし立てた。岸田文雄首相(自民党総裁)は金融政策が為替に影響を与えることは認めつつ、政策変更は中小零細企業の資金調達や景気にも影響を与えるとして、「総合的に判断しなければならない」と言葉をにごした。

5月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比で2・1%上昇し、2カ月連続で2%の大台に達した。インフレはロシアのウクライナ侵攻などに伴う原油や穀物など原材料価格の高騰が主因とはいえ、足元の急速な円安が輸入物価高を助長している。

円安を生み出すのは日米の金利差拡大だ。日銀が超低金利政策を維持することで、利上げを加速する米国との違いが際立ち、円を売って資産運用で有利なドルを買う動きが続いている。

輸出立国だったかつての日本では、円安のうまみは大きかった。ただ、企業の海外移転で輸出促進効果が薄れた半面、東日本大震災後の原発停止で火力発電用の燃油輸入が増え、貿易収支の赤字傾向が定着。企業の原材料コストや家計の出費を増やす「悪い円安」が懸念されるまでになった。

一方、日銀が円安を抑えようと金利を引き上げれば住宅ローン金利や企業の借入金利も連動して上がり、経済活動が冷える。特に新型コロナウイルス禍で債務が増えた企業の資金繰りは急速に悪化する。巨額の財政赤字を抱えた政府も国債費の増額に苦しめられる。

また、日本経済がインフレに弱いのは、賃金が上がらず家計負担だけが増える脆弱(ぜいじゃく)な経済構造が背景にある。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは、参院選の論戦が目先の負担軽減だけに終始していると指摘。日銀を追及するより、「賃上げに向けた展望を論じるべきだ」と指摘する。(加藤園子)

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