朝晴れエッセー

父の背中・7月3日

父は学生の頃は水泳部で、とても泳ぐのが上手だった。私が小さい頃、よく海水浴に連れて行ってくれて、そのとき私を背中に乗せて泳いでくれたのです。しかし、とても深いところまで行ってしまうので、私は怖くて早く戻ってほしかったものです。

最近ある海岸の小さな島を見たときに、私はこの島に泳いでわたったことがあるという、突拍子もない記憶が蘇(よみがえ)りました。

しかも、小学校2、3年生の頃で、犬かきで泳いでいたというとんでもない記憶です。なにかの間違いではないかと思ったのですが、確かにそんな気がするのです。

後日、その記憶と父の背中で泳いだ記憶が重なりました。そうだ、父の背中につかまってあの島にわたったのだ。そして帰りは覚えたての犬かきで、自分で泳いで戻ったのだ。

おぼろげに記憶に浮かんだ父の背中が、この謎を解いてくれた。父の記憶というと、年をとってからのことばかりだったので、これは父の若いときの貴重な思い出となりました。

特に父と水泳の話をしたことはなかったのですが、私も中学、高校と水泳部に入ったのです。やはり父の背中の記憶が多少なりとも影響していたのでしょうか。

父のいる間は、こんなこと思い出しもしなかったのに、なんで今頃思い出したのかと不思議に思います。こんな私を父はどう思っていたのだろう。

山形有三(67) 千葉県市原市

会員限定記事会員サービス詳細