ウイグル弾圧資料に「帰国者を収容」と明記 拘束され死亡した日本留学生の名も

在日ウイグル人の子供たちにウイグル語を教えるミヒライ・エリキンさん(日本ウイグル協会提供)
在日ウイグル人の子供たちにウイグル語を教えるミヒライ・エリキンさん(日本ウイグル協会提供)

中国新疆(しんきょう)ウイグル自治区の公安当局から大量流出したウイグル人らの強制収容に関する内部資料「新疆公安ファイル」に、日本在住を切り上げ2019年に自治区に戻った後、収容され、翌年死亡したウイグル人女性の名前や個人情報などが記載されていた。中国に戻った場合には再出国させないようにする指示も明記されていた。中国当局が、海外在住の自治区出身者が帰国した後は出国させない方針を取っていた実態が浮き彫りになった。

「帰国者は片っ端から捕らえろ」

この女性は自治区カシュガル出身のミヒライ・エリキンさん。中国の上海交通大を卒業し、14年9月に来日。東大大学院の修士課程を16年9月に修了し、研究者として関西の大学に在籍していた。

今年5月に明らかになった「新疆公安ファイル」にはミヒライさんの中国名や住所、身分証の番号などがあり、当局の対応指針として「未収押」(収容されていない)、「出境未帰」(国外にいて中国に帰ってきていない)、「防回流」(帰国したら再出国を防ぐ)などと記載されていた。

ファイルには、当時の自治区トップだった陳全国・党委員会書記が「海外からの帰国者は片っ端から捕らえろ」と指示する演説内容も含まれていた。

現在日本で暮らすウイグル人の名も

17年頃から中国当局によるウイグル人への収容政策が強化されると、ミヒライさんのもとに父親と複数の親族が収容されたとの情報が寄せられた。ミヒライさんは当時、教育者を志し、在日ウイグル人の子供に英語やウイグル語を教えていたが、父親の身を案じ、悩んだ末に19年6月、周囲の説得を振り切る形で中国に戻った。関係者によると、中国当局に拘束された後、20年末に死亡したことが21年に確認された。30歳だった。

ミヒライさんの帰国を翻意させようと説得した関東地方在住のウイグル人女性は、産経新聞の取材に対し、「流出資料の住所もミヒライさんが生まれた場所と同じ。もっと早く資料が公開されていたら、帰国を考え直したかもしれない。ミヒライさんには『(中国当局の)ブラックリストに入っているよ』と話したが、その通りだった」と語った。

「新疆公安ファイル」には、ミヒライさん以外にも現在日本で暮らすウイグル人の名前が複数、確認されている。先の国会では参院自民党が目指した対中人権決議は採択されないまま6月15日に閉会した。(奥原慎平)

ウイグル弾圧の内部資料大量流出 中国新疆ウイグル自治区のカシュガル地区とイリ・カザフ自治州の公安サーバーから、ハッキングによって内部資料が大量に流出し、米非営利団体「共産主義犠牲者記念財団」などが5月下旬、「新疆公安ファイル」として資料の分析結果を公表した。資料は中国が「職業技能教育訓練センター」と呼ぶ収容所などの実態を示す写真や2万3千人超の収容者名簿、約2900人分の顔写真、共産党幹部の発言記録など、2017~18年を中心とした数万点。

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