山本一力の人生相談

いじわるな義父に会いたくない

イラスト・千葉真
イラスト・千葉真

相談

70代女性。40代の娘のことで相談します。結婚して15年、中学生の長男がいます。夏休みや年末年始のたびに、孫の顔を見せようと義理の親の実家に帰省しますが、毎回、義理の父は娘に「親ばなれ、子ばなれができていない」「虐待しているんじゃないの」などと、いわれのない難癖をつけるそうです。帰省中も娘は忙しく料理をし、嫁の務めを果たそうとしているのに。帰宅後、夫に相談してみても「もう終わったことだから」とはぐらかされたり、機嫌が悪くなったりするそうです。

そんな状況を長らく我慢してきましたが、最近娘は夫の実家に行かなきゃと思うと、気分が悪くなると言います。私は長男と娘の夫の2人だけで帰省したらいいのではないかと思うのですが、それは間違っているでしょうか。

回答

まず申し上げたい。娘さんはえらい、と。

言語能力に問題ありやの義父から、いわれなき言葉のつぶてを投げられても。

穏便に対処されたことで、実家との関係は平穏裏に続いていると拝察する。

こころなき旦那方実家のありようはしかし、どうやら他家でもあるようだ。

つい先日、カミさんは友人から、よく似た話を聞かされていた。

彼女(友人)の旦那は郷里が九州。帰省の都度、旦那の親族やらが集まり、彼女は台所から出られず仕舞いだったという。

料理当番に、労(ねぎら)いの言葉など皆無。あろうことか、宴席に彼女の席はなかった。

「主人は親族との歓談に夢中。わたしを気遣ってくれたひとなど、だれもいない」

こんな帰省が十年以上も続いた。我慢が切れた彼女は、ペットを飼うことにした。

「ペットの世話で、家を空けられないから」

これを理由に帰省を拒んだ。

実家の面々が逢いたいのは旦那。彼女が同行せずとも、問題は生じないまま、いまに至っているという。

断じては酷だが、娘さんのご亭主実家も、似たものやもしれぬと感ずる。

先方が心待ちにしているのは次々代を継ぐ男児(孫)と、実息。

嫁は、料理・家事の手伝い役なのか。

しかし母(嫁)が息子(孫)に否定的な愚痴はこぼしていないがゆえ、孫は滞在中は祖父母に親しむ。

結果、帰省先で大いに歓待されよう。

娘さんが腹ふくるる思いを夫に話すには、その機の見極めがむずかしい。いまこそ、その時と機を判じられるのは女房だけだ。

娘の幸を願うなら。娘夫婦のやりとりからは距離を保ってはどうか。代わりに、帰省できずもやむなしと、相手が得心する口実を、母娘で明るく思案してみては。

回答者

山本一力 作家。昭和23年生まれ。平成9年「蒼龍」でオール読物新人賞を受賞しデビュー。14年「あかね空」で直木賞受賞。近著に「湯どうふ牡丹雪 長兵衛天眼帳」(KADOKAWA)、「牛天神 損料屋喜八郎始末控え」(文芸春秋)、「ジョン・マン7 邂逅(かいこう)編」(講談社)、「後家殺し」(小学館)など。

相談をお寄せください

暮らしの中で感じたもやもやとした気持ちやお悩みをお寄せください。紙上では匿名です。住所、氏名、年齢、職業、電話番号を明記のうえ、相談内容を詳しく書いて、〒100―8078(住所不要) 産経新聞「人生相談 あすへのヒント」係まで。〈メール〉life@sankei.co.jp〈FAX〉03・5255・6634。採用分には1000円分の図書カードを差し上げます。

会員限定記事会員サービス詳細