ポツンと自販機 〝珍サイダー〟で人気爆発 福島

農道の脇にポツンとある自販機に全国各地のサイダーを補充する佐藤ひろみさん=福島市(芹沢伸生撮影)
農道の脇にポツンとある自販機に全国各地のサイダーを補充する佐藤ひろみさん=福島市(芹沢伸生撮影)

果物畑が広がる福島市郊外の農道。民家もほとんどない道路沿いに、自動販売機が1台、ポツンと置かれている。売られているのは瓶入りのサイダー。中には全国の〝ご当地もの〟がずらりと並んでいる。人通りがほとんどない場所になぜ? その謎に迫った。

2本で500円

JR福島駅から北西へ直線距離で約8キロ。農道脇の自販機を扱っているのは、近くに住む佐藤義則さん(59)、ひろみさん(60)夫妻。厨房(ちゅうぼう)機器や自販機の設置、修理などを手掛ける義則さんが、自販機をPRしようと平成22年夏に置いた。

当初は山菜などを売っていたが、自販機に冷蔵機能がなく、早朝に入れた野菜も昼頃には傷んでしまうことが多かった。当時、ひろみさんは同市で飲食店を営み、瓶入りサイダーを扱っていた。「瓶なら腐る心配がない」(ひろみさん)と、商品をサイダーに変更した。

自販機に全国各地のサイダーを補充する佐藤ひろみさん。2本の組み合わせは気分で決めているという=福島市(芹沢伸生撮影)
自販機に全国各地のサイダーを補充する佐藤ひろみさん。2本の組み合わせは気分で決めているという=福島市(芹沢伸生撮影)

自販機はコインロッカーのような構造で、販売ボックスが18個ある。2本ずつ入っていて全て500円。透明で中身が分かり、欲しい商品の場所にコインを入れる。使えるのは100円硬貨だけだ。

ひろみさんは「ネットで購入したものを売るため、もうけはほとんどない」といい「いくら売れても〝サイダー御殿〟は建ちません」と笑う。

ユニークな看板

設置当初「ポツリポツリ売れる程度」(ひろみさん)だった売り上げが一気に伸びたきっかけはテレビ。「夫が宣伝で自販機の横に『各地の珍しいサイダー』と2行で書こうとした。でも、字が大き過ぎて書ききれず『しい』を省略して『各地の珍サイダー』にした。おかしくて私が番組に売り込んだ」とひろみさん。

応募が採用になり、全国の珍しい風景を紹介する番組で放映され人気爆発。行列ができ商品の補充が間に合わないこともあった。東日本大震災で売れなくなったが、しばらくすると再び注目された。

残念ながらユニークな看板は風で飛んでしまいやめたが、グーグルマップで「珍サイダー」を検索すると「各地の珍サイダー」と写真付きで出てくる。

一番人気の「長崎かすていらサイダー」。2本入りで本物のカステラと間違えそうな箱に入っている=福島市(芹沢伸生撮影)
一番人気の「長崎かすていらサイダー」。2本入りで本物のカステラと間違えそうな箱に入っている=福島市(芹沢伸生撮影)

全国から40種以上

扱った商品は北海道から沖縄まで40種類を超える。ペットボトルや缶入りは売らない。ひろみさんは「瓶には高級感がある。これはこだわり」。2本の組み合わせは「気分で決める」そうで「同じものを隣にしない。いつも20種類ほど入っている」とも。

商品の補充は土曜と日曜だ。平日でもボックスに5カ所以上の空きができると補充している。

一番人気は、設置当初から扱っている「長崎カステラサイダー」。ひろみさんによると「とにかく甘い。カステラの香りがしてカスタードクリームのような味もする」。

静岡県で作られているカレーパンサイダー(左)=福島市(芹沢伸生撮影)
静岡県で作られているカレーパンサイダー(左)=福島市(芹沢伸生撮影)

記者は「カレーパンサイダー」に挑戦した。黄色いラベルにカレーパンの絵。飲料の色も黄色で、ほんのりカレーの香り。口に含んだ瞬間はカレー味、その後は口の中全体に甘さが広がった。不思議な飲み物だった。

サイダーではないが「うなぎコーラ」も気になった(右)=福島市(芹沢伸生撮影)
サイダーではないが「うなぎコーラ」も気になった(右)=福島市(芹沢伸生撮影)

「冷えてない、100円玉しか使えない、夜は暗く、栓抜きもない」(ひろみさん)。それでも買ってくれるお客さんがいる。夏場、自販機の前にサイダーの王冠が落ちていたのを見つけたとき、ひろみさんの頭には「どうやって栓を抜いたの? 生暖かいまま飲んだの?」など、次々と疑問が湧いた。

そんな日常が「面白くてたまらない」と話す、ひろみさん。もうからなくても、ずっと続けるつもりだ。(芹沢伸生)


会員限定記事会員サービス詳細