サハリン2 ロシア、別の日本参画事業へも圧力か

ロシア・サハリン州の液化天然ガス基地(上)から運搬船に延びるパイプ=2009年(共同)
ロシア・サハリン州の液化天然ガス基地(上)から運搬船に延びるパイプ=2009年(共同)

ロシアのプーチン大統領が6月30日、日本企業が参画する極東サハリン(樺太)州の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の運営会社の資産を、ロシアが新たに設立する企業に移管するとの大統領令に署名した。ロシアと対立する北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に岸田文雄首相が参加した直後のタイミングで、エネルギー資源を武器に日本との対立を鮮明にした格好だ。ロシアはウクライナを支援する欧州にも資源輸出を通じ揺さぶりをかけており、専門家は日本企業が参画する別の資源開発事業にも圧力をかける危険性を指摘する。

大統領令は、日本の三井物産や三菱商事が出資する現在の運営会社「サハリンエナジー」の資産を、露側が設立する新会社に引き継がせるとしている。外国企業は新法人の株主として参画できるが、露側が示す条件に同意する必要がある。受け入れなければ、サハリン2からの撤退を余儀なくされる。

サハリン2について、日本政府はエネルギー安全保障上の重要な権益として撤退しない方針を繰り返し表明していたが、露側から事実上突き放された。スペインで開催され、6月30日に閉幕したNATO首脳会議には岸田氏が日本の首相として初参加しており「(露側の)発表のタイミングは決して不思議ではない」(ロシア情勢に詳しい大阪商業大学の中津孝司教授)との見方が出ている。

ロシアはこれまでも、エネルギー資源を武器に、ウクライナ侵攻をめぐり対立する欧州諸国に繰り返し揺さぶりをかけてきた。

ロシアは4月以降、ロシアが要求する自国通貨ルーブルでの天然ガス輸入代金支払いに応じないことを理由に、ポーランドやフィンランド、デンマークなどへの天然ガス輸出を相次ぎ停止。6月中旬には、露国営天然ガス企業ガスプロムが、ロシアからドイツに天然ガスを運ぶパイプライン「ノルドストリーム」の供給量を減らした。

ガス供給量削減は、ドイツ、フランス、イタリア、ルーマニアの首脳がウクライナの首都キーウ(キエフ)を訪問し、ゼレンスキー大統領と会談したのとほぼ同じタイミングで行われた。露側は「設備上の問題」(ペスコフ大統領報道官)としたが、ハーベック独経済・気候保護相は「政治的な動機によるものだ」と批判している。

ロシアと欧米、日本の対立が解消するめどが立たないなか、ロシアが今後も資源輸出を他国への圧力に利用する可能性は高いとみられる。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの土田陽介副主任研究員は「日本が参画する石油・天然ガス開発事業『サハリン1』や、北極圏での液化天然ガス(LNG)開発事業でも、サハリン2と同様の事態が起きる可能性がある」と警告する。(黒川信雄)

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