記者発

譲位から3年、上皇ご夫妻の現在 社会部・緒方優子

沖縄復帰50年を記念した特別展「公文書でたどる沖縄の日本復帰」を見学される上皇ご夫妻=6月17日午後、東京・北の丸公園の国立公文書館(代表撮影)
沖縄復帰50年を記念した特別展「公文書でたどる沖縄の日本復帰」を見学される上皇ご夫妻=6月17日午後、東京・北の丸公園の国立公文書館(代表撮影)

何とも言えない。

そんなことを書くと記者失格になってしまうが、皇室の方々を取材していると、その場の「何とも言えない」空気を伝える言葉を紡ぎ出すのに、苦労することが多い。

6月、上皇ご夫妻が都内で開催された沖縄に関する2つの特別展に、相次いで足を運ばれた。新型コロナウイルス禍で、人が集まる場所への外出を控えてきたご夫妻の展覧会へのお出ましは、およそ1年7カ月ぶり。いずれの展覧会もご夫妻のご覧は閉館時だったが、残っていた一般の来場者らが出迎えた。距離は保たれ、歓声を上げる人もいなかったが、マスク越しにも分かる人々の歓喜の表情は、ご夫妻にも伝わっていたのではないかと思う。

記者にとっても、久しぶりに間近でご夫妻のお姿を拝見する機会となった。コロナ禍前の令和元年6月、代替わり関連行事でご夫妻の京都ご訪問に同行したが、その時と比べても、より和やかな、リラックスした雰囲気を感じた。

同時に、昨年12月に米寿を迎え、歴代天皇で最長寿となられた上皇さまと、1つ年下であられる上皇后さまにとって、この3年という月日は、決して短い時間ではなかったということも推量された。

車を乗り降りする際や段差の前では、ご夫妻は特にゆっくりと慎重に歩を進め、お互いを気遣い、しっかりと手を取り合われている時間が以前よりも長いように感じた。展示の前では、上皇さまが確認するように何度か同じ質問を繰り返される場面もあったが、上皇后さまがユーモアを交えて応じられると、お二方で顔を見合わせ、「ははは」と明るいお声が響いた。胸がじんわりと温かくなった。ご夫妻の周辺に終始、「何とも言えない」心地よい空気が醸成されていたのは、そう感じていたのが自分だけではなかったからではないかと思う。

「上皇ご夫妻は今、どんなふうにお過ごしなのか」「お元気か」。上皇さまの譲位後、過去のご訪問先などでご夫妻と関わりのあった人のもとへ取材に行くと、こんな「逆取材」を受けることがある。気にかけている人は、読者にも少なくないのでは、と想像する。垣間見えるご夫妻のお姿を、その場の空気を、できる限り言葉にして、届けられたらと思う。

【プロフィル】緒方優子

平成22年入社。神戸、水戸勤務の後、27年から東京本社社会部。原子力取材班、警視庁捜査1課担当を経て、現在宮内庁を担当。

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