【台北=矢板明夫】「一国二制度は素晴らしい制度で変える理由は何もない。長期にわたって堅持すべきだ」。1日の香港返還25年式典で中国の習近平国家主席はこう述べ、国家安全維持法(国安法)が施行された今でも、香港では「一国二制度」が維持されているとの考えを示した。この習氏の発言が台湾でさっそく波紋を広げている。
台湾の蘇貞昌・行政院長(首相に相当)は習氏の発言直後、記者団に「香港が返還された当時、『暮らしは50年間変わらない』と(中国は)市民に約束したのに、25年で自由も民主主義も消えてなくなった」と指摘。その上で「私たちは台湾の主権、自由、民主主義を守っていく。中国のいわゆる一国二制度は信用できない」と述べた。
一国二制度はそもそも、中国政府が1970年代末、台湾問題を平和的に解決するために提案した。「高度な自治」などを保証する内容で、97年に英国から返還された香港で初めてこの制度が導入された。しかし近年、中国は香港の内政への干渉を強めている。政府への批判を一切認めない国安法が施行されたほか、選挙制度も民主派が当選しにくいように変更された。