アウトドア活動が幅広い人々に楽しまれるようになりました。新型コロナウイルス禍で、屋外での活動に安心、安全や健康のイメージが先行し、ブームに拍車がかかっていると思います。特にキャンプの注目度が高まり、アウトドア活動を行っていなかった人もレジャー(余暇)として親しむようになっています。
子どもを対象にした「組織キャンプ」活動は野外教育の中枢として発展してきましたが、ここ数年は保護者の関心も高まっています。コロナ禍で多くの学校行事が中止となり、子どもたちの多様な体験の場が減少しました。自宅で家族のみの関わりとなっていることへの長期的な弊害も心配されています。そこで、感染リスクが低いと思われる自然環境での健康的で活動的な体験や、他者と交流し、協力する体験が期待できるキャンプは、子どもたちが楽しみながら成長できる機会なのではないか-との期待が高まっていると思われます。
びわこ成蹊スポーツ大学は、琵琶湖と比良山系の自然環境に恵まれ、野外スポーツ・教育を行う絶好のロケーションです。多様な授業や実習も実施しています。子どもたちを対象にしたキャンプも行われており、その一つに春夏秋冬の通年型野外教育プログラム「Outdoorsy Community 比良人~ひらんちゅ~」があります。「Outdoorsy Community」とは、自然が好きな人たちのコミュニティーという意味。地域の人々の協力も得て、多様な活動を楽しみながら成長できるコミュニティーの形成を掲げています。
アウトドアは地域の人々の生活や文化があり、動植物などの生態が豊かな環境です。そういった社会や環境への配慮や、安全対策が欠かせません。プログラムでは、土地の文化や歴史も含めて楽しみながら関わり、恩恵を享受し、学び、すべての人が一緒に成長することを目指しています。
中でもマザーレイクの「水」は重要な要素です。琵琶湖畔でキャンプをしながら、水遊びやカヤック、いかだ探検などの活動▽沢登りや登山で比良山系の源流をたどり、おいしい水をいただく体験▽田んぼや畑での稲作や野菜作りの体験▽収穫の恵みをアウトドアクッキングする体験▽千年以上続く伝統漁法「魞漁(えりりょう)」で捕獲した湖魚をいただく体験-などを取り入れています。参加者には、自然の豊かさや恵みを味わい、生かされていることを感謝し、自然との幸せな関係を求める姿勢を身に付けてほしいと願っています。
専攻する学生たちにとっても、学びを実践する貴重な機会です。年間を通したテーマを設定し、企画・運営・指導に取り組みます。地域の人々の協力や指導を受けながら一生懸命になる学生たち、子どもたちの明るい笑顔、成長を願う保護者の思い、それらを受け入れてくれる大自然、すべてが相まって調和のとれたコミュニティーが形成される様子を見ると、社会を形成する重要な要素がそこにあるように感じられます。
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林綾子(はやし・あやこ)広島市出身。米インディアナ大学博士課程修了。びわこ成蹊スポーツ大学野外レクリエーション・スポーツコース教授。Wilderness Education Association Japan(WEAJ)、日本野外教育学会、滋賀県希望が丘文化公園などで理事を務め、野外教育の指導者育成や普及活動に務める。
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スポーツによって未来がどう変わるのかをテーマに、びわこ成蹊スポーツ大学の教員らがリレー形式でコラムを執筆します。毎月第1金曜日予定。