家族がいてもいなくても

(740)「お一人さま」の覚悟

イラスト・ヨツモトユキ
イラスト・ヨツモトユキ

長く続いていた膝の痛みが、ようやく薄らいできた。

ついに痛みが底をつき、ゆっくり快方へとカーブを切ったという感じ。

もしかしたら治るかもしれない。小走りに走るなんてこともできるかも、と思ったら、うれしくて気分が急上昇。いきなり前向きになってきた。

痛くても動かさないでいると、ダメになるだけよね…と、休んでいたパドル体操もついに開始。

さらに、部屋に常にヨガマットを広げておき、仕事の合間に体をねじったり、足を持ちあげたりと、これまでになく頑張っている。

とりわけ、足腰を鍛え直して、車の運転だけは、せめてあと5年は続けたいと願っている。

というのも、里山の美しい風景の中を一人でドライブに出掛ける楽しみを、私はどうしても手放したくないのだ。

わがコミュニティーハウスの周辺には、この数年間に自分で見つけた「好きな場所」がいくつもある。

とくに秘密の場所というわけではないけれど、数日間、部屋にこもっていると、気持ちがその場所へと誘われてしまう。

たとえば、そこは那須連峰が一番、「雄々しく見える場所」であったりする。

広い原っぱの中央に、1本だけすっくと立ち続ける雄々しいこぶしの大木だったりする。

その大木には毎年、花がまるで白いチョウの群れのように咲き誇り、いつまでも眺めていたくなる。

この一人ドライブの途中には、立ち寄りたくなる小さなカフェなどもあって、そこで飲むコーヒーになんとも安らぐのだ。

思えば、子供の頃から一人遊びが好きだった。

裏山近くに自分の隠れ場などを設けていて、なにかとそこに行っていた。

夕方になると、2歳上の兄が母に言われて、自転車で探しにやってきた。

「早く、帰るんだからっ」

怒ったように、めんどうくさそうに言われたことをいまだに覚えている。

「三つ子の魂百まで」というけれど、どんなに年を重ねても、そういう性癖は、一生変わらないのだな、と思う。

そんなわけで、「膝が痛くて歩けない」という危機に陥って、ついに私も目が覚めたのだ。

自分を守るのは自分しかいない。最期まで、自立自助を貫く気持ちで生き抜かなきゃならないのね、と。

(ノンフィクション作家 久田恵)

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