鑑賞眼

東京バレエ団「ドン・キホーテ」 次代担う秋山瑛・宮川新大が躍動

床屋のバジル(宮川新大、左)とキトリ(秋山瑛)の恋物語を、超絶技巧で見せる「ドン・キホーテ」(photo: Shoko Matsuhashi)
床屋のバジル(宮川新大、左)とキトリ(秋山瑛)の恋物語を、超絶技巧で見せる「ドン・キホーテ」(photo: Shoko Matsuhashi)

東京の猛暑をも吹き飛ばしそうな熱気と、躍動感あふれる踊りが実に爽快だった東京バレエ団の「ドン・キホーテ」。それは今舞台で初共演した若手プリンシパル(最高位ダンサー)、秋山瑛(あきら)と宮川新大(あらた)の主演コンビが、成功した証でもある。次代を担う2人の大技の連続とパワフルな群舞に、思わず頬が緩んでしまったのは、筆者だけではあるまい。

誰もが知るスペインが舞台の古典作品。今回上演されたのは、露ボリショイ・バレエの伝説的スター、ウラジーミル・ワシーリエフ演出、振付版で2001年、東京バレエ団が初演した。老騎士ドン・キホーテの冒険に、床屋のバジル(宮川)と町娘キトリ(秋山)の恋物語がからむコミカルな物語。このワシーリエフ版は、冗長な部分をカットした2幕構成で、スピーディーな展開が特長だ。

弾けるような若さと確かな技術で、観客を魅了したキトリ役の秋山瑛(左)と、バジル役の宮川新大(photo: Shoko Matsuhashi)
弾けるような若さと確かな技術で、観客を魅了したキトリ役の秋山瑛(左)と、バジル役の宮川新大(photo: Shoko Matsuhashi)

それゆえオーケストラの演奏も、通常の「ドンキ」よりテンポが速いのだが、そのスピード感に秋山・宮川が動きをピタッと合わせながら、全く軸のぶれない踊りを見せ、実に気持ちいい。2人の相性もよく、今年プリンシパルに昇格したばかりの秋山が、南欧の太陽のような笑顔を恋人バジル(宮川)に投げかければ、宮川もやんちゃな持ち味が生き、さらに躍動。宮川の丁寧なサポートに、秋山が伸び伸びとした踊りで応え、また宮川が秋山を片手で軽々と持ち上げる場面が何度もあった。身軽で、疲れを知らぬ2人の若さがまぶしい。

〝第二の主役カップル〟であるエスパーダ(柄本弾、中央右)とメルセデス(政本絵美、同左)は大人の魅力を見せた(photo: Shoko Matsuhashi)
〝第二の主役カップル〟であるエスパーダ(柄本弾、中央右)とメルセデス(政本絵美、同左)は大人の魅力を見せた(photo: Shoko Matsuhashi)
スペインを舞台にした、陽気でコミカルなバレエ「ドン・キホーテ」。ワシーリエフ版はスピーディーな展開で、踊りの洪水のよう(photo: Shoko Matsuhashi)
スペインを舞台にした、陽気でコミカルなバレエ「ドン・キホーテ」。ワシーリエフ版はスピーディーな展開で、踊りの洪水のよう(photo: Shoko Matsuhashi)

一方、今作の〝第二の主役ペア〟であるメルセデス(政本絵美)とエスパーダ(柄本弾)は、大人の色気で魅了。白い闘牛士姿の柄本が、群舞を率い赤いマントを翻す場面は、色彩的にも美しく、興奮した。面白かったのが1幕のジプシーの踊りの場面。加藤くるみ演じるジプシーの娘が、流浪の民の悲哀を憑依型の演技で熱演し、印象に残った。

今公演では、看板ダンサーである上野水香をはじめ3組のペアが主演し、最も若い秋山と宮川はいわば〝3番手キャスト〟。しかし、高水準の舞台になった。そこが東京バレエ団の人材の厚さ。2001年の初演で、ワシーリエフから直接指導を受け、キトリを演じた斎藤友佳理・同団芸術監督から始まった財産演目が、次代に大切に引き継がれていることを感じさせる舞台だった。

6月23~26日、上野の東京文化会館。(飯塚友子)

プリンシパルに昇進したばかりの秋山瑛。ドゥルネシア姫役では、気品あふれる踊りを見せた(photo: Shoko Matsuhashi)
プリンシパルに昇進したばかりの秋山瑛。ドゥルネシア姫役では、気品あふれる踊りを見せた(photo: Shoko Matsuhashi)


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