既存コンクリが〝森林〟に 清水建設・北大、CO2吸収塗布剤を開発

表面にDACコートを塗ると高速道の橋脚は森林のようにCO2吸収体になる=埼玉県幸手市(遠藤一夫撮影)
表面にDACコートを塗ると高速道の橋脚は森林のようにCO2吸収体になる=埼玉県幸手市(遠藤一夫撮影)

橋脚やビルなど既存のコンクリート構造物の表面に塗るだけで二酸化炭素(CO2)の吸収を促進する塗布剤を清水建設と北海道大学が開発した。コンクリート内の鉄筋の腐食を抑え、耐久性も向上させる。建設業界では新規のコンクリート製造に関するCO2削減技術の開発が中心だが、既存のコンクリート構造物を森林のような「CO2吸収体」に変える技術は初めて。令和8年ごろの実用化を目指す。

この塗布剤は「DAC(ダイレクト・エア・キャプチャー)コート」と呼び、主成分は発電所や工場の排ガスからCO2を分離・回収する際に用いる、水素と窒素からなるアミン化合物。清水と北大はコンクリートへの固定化に適した物質を分子レベルで探索し、CO2吸収性能が高い塗布剤の開発に成功した。

コンクリートは空気中のCO2を一定程度、吸収するが、DACコートで吸収量を増やす。アミン化合物の働きによってCO2とコンクリート内の水酸化カルシウムが反応して炭酸カルシウムになって固定化する仕組みだ。一般的なコンクリートの場合、1立方メートル当たり18キログラムのCO2を固定するが、DACコートを1回塗るだけで固定量が1.5~2倍の27~36キログラムに増大する。数年おきに塗ることで、吸収力を高めることができる。

清水によると、約300立方メートルのコンクリートを使う橋脚にDACコートを塗った場合のCO2吸収量は約9トン。スギの人工林1ヘクタールが1年間に吸収するCO2量の約8.8トンとほぼ同量で、コンクリートは森林のようにCO2吸収体としての価値を持つとしている。

実験では、DACコートを塗ったコンクリートを置いた箱内は1時間ほどでCO2濃度が約20%下がった(清水建設提供)
実験では、DACコートを塗ったコンクリートを置いた箱内は1時間ほどでCO2濃度が約20%下がった(清水建設提供)

また、コンクリートはアルカリ性だが、炭酸カルシウムがつくられると中性化が進み、鉄筋表面のアルカリ性の被膜が破壊され腐食する。DACコートは、鉄筋表面に保護層を形成する効能もあるため、腐食速度を従来の50分の1に抑えることができ、コンクリートの耐久性も上がる。

日本国内には既存のコンクリート構造物が約100億立方メートル分あるとみられ、全ての表面にDACコートを塗ると3億トン以上のCO2を吸収できるという。

近年、コンクリートの国内需要は減少しているものの、年間8000万~1億立方メートルが製造されており、これに伴うCO2排出量は約1500万トンに上る。CO2排出量を上回る吸収量の実現を目指す。

普及にはコストが壁となるが、清水の建設基盤技術センター革新材料グループの辻埜(つじの)真人グループ長は「安全で、コストを抑えられる物質の開発を目指した。フッ素系コーティング剤などと同等のコストを実現できる」と話している。

今後は化学メーカーとの共同研究やライセンス供与を行い、2年後に既存のコンクリート構造物で性能検証を始める。令和7年の大阪・関西万博のパビリオンで使用し、8年ごろ実用化する。

コンクリートを森林並みのCO2吸収体と位置付けられるようCO2固定量の定量評価も進める。清水は、CO2の削減効果を取引するカーボンクレジットにコンクリートを活用できるとみており、「コンクリート構造物の保有者らがビジネス化できるようにする」(辻埜グループ長)としている。(遠藤一夫)

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