政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)」の達成に向けては、農林水産分野での脱炭素化も求められている。そうした中、農林水産省が力を入れるのが、化石燃料を原料とする化学農薬・肥料の使用を減らすことで環境に配慮する〝環境保全型農業〟への転換推進だ。ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、大半を輸入に頼っている化学肥料が高騰しているのも転換を急ぐ理由の一つになっている。新たなビジネスチャンスも広がりつつある。
■露侵攻で価格高騰
政府は21日、50年までに農林水産業からの二酸化炭素(CO2)排出量ゼロや環境保全を目指す「みどりの食料システム戦略」の実現に向け、30年までの中間目標を公表した。環境保全型農業の推進を掲げ、化石燃料を使わない電動草刈り機の普及率を5割にするほか、化学肥料の使用量を20%減らすことなどを目標に盛り込んだ。
特に化学肥料をめぐっては、原料主産国の中国による輸出規制や、ウクライナ危機に伴う経済制裁でロシアからの調達が滞ったことで価格が高騰。食料安全保障と脱炭素化の両面で、化学肥料に頼らない環境保全型農業への早期転換が喫緊の課題に浮上してきた。