マルコス比大統領が就任 「親中路線」修正示唆も

大統領就任宣誓式に臨むフェルディナンド・マルコス氏(右)=30日、フィリピン・マニラ(AP)
大統領就任宣誓式に臨むフェルディナンド・マルコス氏(右)=30日、フィリピン・マニラ(AP)

【シンガポール=森浩】フィリピンで30日、独裁体制を敷いた故マルコス元大統領の長男、フェルディナンド・マルコス元上院議員(64)が大統領に就任した。マルコス氏は対外的にはドゥテルテ前大統領の親中路線を修正する構えも見せるが、具体的な政策では見通せない面が多い。36年ぶりに復権した「マルコス」がフィリピンをどう導くか。手腕が注目される。

首都マニラの国立美術博物館で行われた就任宣誓式には、日本から林芳正外相、中国から王岐山(おう・きざん)国家副主席、米国からハリス副大統領の夫エムホフ氏らが出席。新政権への国際的関心の高さをうかがわせた。

就任演説でマルコス氏は父の統治期に触れ、「彼は必要なサポートがあるときもないときも成果を挙げた」とインフラ整備などでの実績を称賛。「その息子もそうだろう」と続け、実行力をアピールした。

宣誓式には、父の時代に数千足の靴を保有して批判を浴びた母のイメルダ氏(92)も出席。1986年の「ピープルパワー(民衆の力)政変」でマラカニアン宮殿(大統領府)を追われたマルコス一族が復権したことを印象付けた。

マルコス新政権はドゥテルテ前政権の施策を大筋で継承する見通しだが、マルコス氏自身は公開討論会の参加を拒否するなど、政治信念や政策を積極的に発信していない。国内では新型コロナウイルス禍で経済が疲弊する中、5月のインフレ率が5・4%となるなど物価高が進行。当面は経済対策に追われるが、どう対応するかは未知数だ。

外交面では南シナ海の最前線フィリピンを取り込もうと、米中がマルコス新政権に秋波を送る。マルコス氏は就任前、米中の間で「非常に繊細な道」を歩まなければならないと述べたが、南シナ海問題で「海洋権益が踏みにじられるのを許さない」とも宣言した。ドゥテルテ氏の親中姿勢と一線を画す可能性を示したが、「中国は友人」と語ったこともあり、外交姿勢も見通せない面がある。

地元政治評論家、リチャード・ヘイダリアン氏はドゥテルテ氏の親中路線について「多くの国民は何の実りももたらさなかったことに気づいている」と分析。マルコス氏は国民感情も踏まえ、米国との同盟関係維持に努めるとみている。

政権運営をめぐる不安要素もある。ドゥテルテ氏の長女、サラ・ドゥテルテ副大統領(44)の人気は絶大で、マルコス氏と対立する可能性がある。父の独裁政権下では多数の市民が殺害され、最大100億ドル(約1兆3600億円)と試算される不正蓄財も問題化した。マニラ市内では抗議デモが行われるなど「マルコス復権」への反発も根強い。

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