ゴマ産業の未来開く 京都企業、パラグアイの農家を支援

パラグアイのゴマ生産農家に杵と臼を使ったゴマのつき方を教えるわだまんサイエンスの深堀さん=パラグアイのサン・ペドロ県(同社提供)
パラグアイのゴマ生産農家に杵と臼を使ったゴマのつき方を教えるわだまんサイエンスの深堀さん=パラグアイのサン・ペドロ県(同社提供)

日本の食卓に欠かせないゴマをめぐって、南米パラグアイのゴマ農家を支援する取り組みが注目を集めている。同国は日本の最大の輸入相手国だったものの、安価なアフリカ産に押されるなどして生産が低迷。再興を目指して、京都の企業が技術移転や商品開発だけでなく、ゴマ食文化の普及も後押しする。日本と地球の裏側を結ぶ壮大なプロジェクトは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の一つに掲げられている「働きがいも経済成長も」を目指す。

栽培の歴史

「Muy rico!」(スペイン語で「とてもおいしい」)

6月9日、手のひらに乗せた小さなゴマの粒を口にしたラウル・フロレンティン=アントラ駐日パラグアイ大使が声を弾ませた。

同国産ゴマを使った商品「ロベルトさんの炒(い)った白ごま」が日本に初めて輸入され、ゴマ製品の企画・開発会社「わだまんサイエンス」(京都市中京区)の深堀勝謙社長(50)が東京にある大使館を訪れた際の一場面だ。大使は上機嫌で「大使館の土産物にしたい」「10月のイベントに出したい」などと、アイデアを語ったという。

 わだまんサイエンスの深堀勝謙社長=京都市中京区
わだまんサイエンスの深堀勝謙社長=京都市中京区

5千年もの歴史があるゴマだが、栽培は米や大豆などのような機械化が難しく手作業に頼るため、多くは発展途上国で貧しい小規模農家の収入源として定着。パラグアイでの栽培は33年前、日本人移住者によって始まった。世界的産地になったものの、約20年にわたる連作障害などの影響で生産量、輸出量ともに2009年をピークに減少した。

技術を指導

こうした中、13年に国際協力機構(JICA)の調査でパラグアイを訪れた深堀さんは「農家をゴマの加工メーカーにしよう」と発案。これまでは生ゴマのまま輸出していたため安く買いたたかれたり、微量の農薬を理由に取引を拒否されたりと不安定な面があった。深堀さんは「付加価値を付けた加工品を売れば、そうしたことがなくなり、安定した収入が得られるはず」と考えた。

現地のゴマ農家に杵と臼を無償で提供してつき方や、フライパンや焙煎機を使って煎る方法を伝授するなど、13年から6年間に計9回渡航して指導を続けた。現在はリモートでの技術指導を行っている。

17年にパラグアイ国内で商品を販売。当初は数軒だった生産農家も数十軒にまで増加し、安定収入につながっているという。

鳥のエサ?

さらに現地ではゴマを食べる習慣がなく、鳥のエサぐらいにしか思われていなかったが、栄養価の高いゴマの魅力を広める食育にも注力。現地の大学と現地の食文化に合わせた試作品の開発に取り組み、ゴマに砂糖を混ぜた「ゴマシュガー」はそのまま食べたり、パンに付けたりする食べ方が人気となった。

18年には現地でゴマブランド「Sesamix」を立ち上げ、ゴマシュガーや水あめを固めたゴマバーなどの販売に乗り出し、ゴマ食文化を醸成。日本への白ゴマ輸出の足がかりとした。「ロベルトさんの炒った白ごま」は手作業で量が少ないため、日本ではネット販売のみ。100グラムで千円と高価だが、手作業で煎っているため時間がたっても風味が抜けず、深い味わいが特徴で好評だという。

「利益優先よりも寄り添うことからスタートし、自分の持つノウハウで手助けしたい」と深堀さん。今後もさまざまな加工品の日本への輸入を目指している。

ラオスの雑草 美しい青に

発展途上国の隠れた産物を魅力ある製品に-。こうした支援に乗り出す中小企業は他にもある。

照明器具メーカー「ツジコー」(滋賀県甲賀市)は、12年前に新規事業として食品加工分野に進出。植物を粉末にして殺菌加工する特殊技術を用いて、ラオスで雑草とされていた植物のバタフライピー(蝶豆)の色素を取り出して販売する事業を手がける。

ラオスの天然着色料を使った青いチョコレート(ツジコ―提供)
ラオスの天然着色料を使った青いチョコレート(ツジコ―提供)

約6年前、同社はバタフライピーが自生していたラオス南部の村に栽培を持ちかけたが、信用してもらえず、毎月通うことで信頼を得たという。さらに、同社の技術によって雑草が美しい青の天然着色料に生まれ変わったことで、ラオスの人々の意識も変えた。

現在、バタフライピーはラオスとタイの5カ所で栽培され、日本や欧州などに乾燥花として数カ月に4トンずつ輸出される。青いハーブティーや青いチョコレートはインスタ映えすると好評を得ている。辻昭久社長(66)は「一方的な支援ではなく、相手の懐に入って何ができるかを考えることが大切」と話している。(田中幸美)

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