主張

参院選と年金 不安解消の具体的道筋を

有権者が身近な問題として関心を寄せるのが年金や医療、介護などの社会保障政策である。このうち年金は、間もなく5年に1度の制度改正に向けた議論が始まる。

超高齢社会が本格化する中で、老後の暮らしを支える年金制度をどう維持するか。参院選での与野党論戦は、こうした不安に政治が解決策を示す絶好の機会だ。各党はそのための道筋を明確に示さなくてはならない。

ところが実際には、与野党とも聞こえのいい政策の羅列にしかみえないのはどうしたことか。

今年度の年金額が0・4%引き下げられたことをめぐる与野党の応酬は象徴的だ。立憲民主党の泉健太代表は日本記者クラブの党首討論会でこの問題に触れ、追加給付の必要性を説いた。これに対して岸田文雄首相は、減額分以上の給付を昨年、低所得者向けに行ったと反論した。

いかにも近視眼的な話だ。この減額は、ルールに基づき現役世代の賃金水準低下に応じて決められた。対症療法的にその補(ほ)塡(てん)を競う前に論じるべき問題がある。

例えば人口減少などを織り込んで年金水準を抑制する「マクロ経済スライド」である。制度導入後の18年間、ほぼ毎年実施されるはずだったのに、実際にはデフレのせいで3回にとどまっている。

予定された調整は進まず、年金水準は抑制どころか膨らんだ。放置すれば年金の持続可能性が危ぶまれる。抑制できなかった分を取り戻す方策こそが政治のテーマである。

各党が掲げる個々の政策には中身を見極めるべきものが多い。自民党や公明党の「被用者保険のさらなる適用拡大」などは50人以下の企業で働く短時間労働者らにも厚生年金を適用することなどが想定されるのだろう。実現すればほとんどの人の年金水準に一定の改善が見込めるが、中小・零細企業に保険料負担が生じるなど乗り越えるべき課題もある。その点も含む丁寧な説明が欠かせない。

野党の公約には、日本維新の会の「最低所得保障制度」や国民民主党の「最低保障機能を強化した新しい基礎年金制度」など、「最低保障」の文言が目立つ。旧民主党が提案し、莫大(ばくだい)な財源が要ると分かって頓挫した「最低保障年金」とどこが違うのか。具体的な財源調達方法を含む実現可能性をわかりやすく示す責任がある。

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