参院選2022 混沌の先に

「ネットの力」より強く 配信・拡散…知名度向上武器に

選挙戦では候補者の演説を撮影するカメラマンらにまじってスマートフォンで撮影する若者の姿も目立つ=22日午後、東京都渋谷区(中村雅和撮影)
選挙戦では候補者の演説を撮影するカメラマンらにまじってスマートフォンで撮影する若者の姿も目立つ=22日午後、東京都渋谷区(中村雅和撮影)

平成25年の参院選でインターネットを使った選挙運動が解禁され9年。それまで候補者は街頭演説や集会などで直接、有権者に訴えるしかなかったが、ネット選挙の解禁により、情報発信方法は多様化した。知名度の低い候補者にとってはネットは大きな武器となるが、近年は主張の過激化といった弊害を指摘する声も出ている。(橘川玲奈、塔野岡剛)

「日本は30年で貧乏になった。今の政権与党に任せていると、お金どころか、命も取られる。国益を守る政党を選んでください!」

参院選公示翌日の6月23日、東京・銀座で、ある諸派の新人候補がマイクを握ると、多くの聴衆が耳を傾けた。この候補者の所属する政治団体は選挙期間中、動画配信に注力しており、連日、候補者の一日の活動をユーチューブで報告。選挙担当者によると、街頭演説の聴衆を大きく上回る約2万人が視聴しているといい、再生回数は10万回を超える。

この政治団体は設立から日が浅いが「支持者が運営するユーチューブチャンネルが頻繁に街宣車を撮影して配信していることも、知名度向上や、根強い支持者の獲得につながった」(担当者)という。

「写真を撮って、ツイッターやフェイスブックに投稿してください」「拡散に次ぐ拡散しか勝機はない」

ある与党の新人候補は東京都千代田区での演説中、何度もそう声を張り上げた。この候補者も連日、ユーチューブの「生配信」で日々の活動を報告しているほか、前回参院選時にはなかったツイッターの音声配信機能「スペース」も活用。公示前には毎週、テーマを決めた上で有識者らを呼び、討論する様子を配信してきた。陣営関係者は「万単位の人が気軽に配信を聞いていた」と話す。撮影機材などが必要なく、スペースは、ユーチューブより手軽に配信できるメリットもあったという。

「(ツイッターの)フォロワー数を伸ばすだけでは足りない。家族などにも政策などを広めてくれれば」。候補者は演説後、取材にそう期待を口にした。

インターネットや交流サイト(SNS)を活用した選挙戦略は、この9年で多くの候補者の間に定着。当選する見込みが極めて薄い「泡沫(ほうまつ)」と呼ばれる候補者の言動がSNSなどで広まり、国政選挙などで知名度を上げた後、市区町村の選挙で当選を果たすケースも出てきた。

「ヤバい選挙」など選挙関連の著作がある選挙ウォッチャー、宮沢暁氏は「ツイッターなど爆発的な拡散性を持つSNSや動画サイトの普及により、一部で話題になって終わるのではなく、候補者が戦略的にステップアップしやすい時代になった」と分析する。

ただ、近年の選挙では多くの候補者が何らかの形でネットでの選挙活動を行っており、その中で頭一つ、抜け出すのは容易ではない。

宮沢氏は「ネット利用者へのリーチで、政治への新規参入者が増えることは利点だが、知名度欲しさに過激なパフォーマンスが生まれることもある。『珍しいことをやったもの勝ち』ではなく、有権者はネットを活用して候補者の政策などの情報を見て、どの候補者に投票するかしっかりと判断することが重要だ」と話した。

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