欧州とインド太平洋が、安全保障の弧で結ばれた。29日に開幕した北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は、まさに「歴史的」と呼ぶのにふさわしい。
NATOが採択した戦略概念はロシアを脅威とみなし、中国についても「体制上の挑戦」を突き付けていると明記した。NATOには北欧のフィンランド、スウェーデンの加盟が固まり、日本や韓国、オーストラリアなどアジア太平洋のパートナー国が寄り添う。地球儀を見れば、中露を大きく囲んでいるように見える。2陣営に分かれた世界を「新冷戦」と呼ぶ専門家もいる。
3年前のNATO首脳会議では、悲観論が支配した。当時のトランプ米大統領はNATOを「時代遅れ」と評し、マクロン仏大統領は「脳死状態」と呼んだ。ウクライナ侵攻と中国の台頭が、ショック療法になった。トランプ政権時代、ほとんど進まなかった「国防費を国内総生産(GDP)比2%にする」という目標も、いきなり欧州の標準になった。