「3度目監督交代」神戸、また同じことの繰り返し…求められる継続性

ピッチサイドから指示を出すロティーナ氏。守備重視の戦術が神戸の選手とマッチしなかった=ノエビアスタジアム神戸(撮影・甘利慈)
ピッチサイドから指示を出すロティーナ氏。守備重視の戦術が神戸の選手とマッチしなかった=ノエビアスタジアム神戸(撮影・甘利慈)

また、同じ轍(てつ)-。その思いが強い。ロティーナ監督との契約を解除したサッカーJ1神戸の強化策についての感想である。監督交代は今季3度目。元スペイン代表のイニエスタをはじめ、豪華な選手を抱えながら最下位から抜け出せない苦境を打破するには、どうしたらいいか。指揮官を代える「応急処置」に頼ってばかりいては、同じことの繰り返しになるのではないかと思う。

実力は折り紙付き

ロティーナ氏が就任した4月8日のオンライン会見。強化責任者となった永井秀樹スポーツダイレクター(SD)は「実力は折り紙付き。状況を改善し、好転させるのは(J2東京V時代に共に働いた経験のある)ロティーナ氏しかいない」と断言していた。確かに、当時の神戸は失点が多く、守備の改善が急務だった。選手の細かな立ち位置までこだわり、組織的な守備網の構築を得意とするロティーナ氏はその部分に関しては、うってつけの人材だった。

一方で、「バルセロナ化」の合言葉の下、イニエスタを中心に培ってきたボールを保持して圧倒的に攻めるスタイルは、同じスペイン人ながら、バスク地方出身のロティーナ氏が掲げる堅守速攻とはまったく異なる。リスクをできるだけ負わないようにして失点を減らすことに主眼を置いた指揮官の戦術に選手たちは戸惑い、攻撃の迫力も消えうせた。25日のオンライン囲み取材で、ロティーナ氏も「守備の安定性はいくつか改善した部分があるが、攻撃の道のりはまだまだ。いい守備を試合結果に反映させるには、ゴールを決めないといけない」と攻撃面での連係強化に物足りなさを感じていた。

まずは失点を防ぐ

だが実際の試合では、勝利よりも負けないことを優先した采配が目立った。契約解除のきっかけとなった26日の浦和戦は、試合終了間際に与えたFKを直接決められ、0-1で敗れた。ともにゴールを奪えない展開が続いた0-0の後半途中、ロティーナ氏が最初に採ったのは、守りの不安を解消する途中交代だった。右アウトサイドのMFでの出場が多い郷家を左サイドで、左が本職のボージャンを右で起用。理由を尋ねると「(先発した)汰木の後ろの左サイドの守備のところが不安だった。ボージャンよりも郷家の方が守備能力が高いので、郷家を左で使った」と答えた。しかしながらピッチ内では、ボージャンが「なぜ自分が左じゃないのか?」とけげんそうな表情を見せ、攻撃の数少ない突破口となっていた汰木も自身の途中交代を不思議がっていた。

そこから神戸の攻撃はちぐはぐになり、好機を生み出せなくなって劣勢を巻き返せなくなった感がある。試合後、酒井は「ゴールに向かっていく姿勢を見せないと」と話し、山口も「もう少し思い切ったプレーを自分たちが見せないといけないと思う。迫力のある攻撃が今はできていない」とリスクを負ってでも得点を狙う必要性を語っていた。

3度目の「緊急登板」

21日にオンラインで行われた天皇杯3回戦前日の囲み取材。ベテランとして「ご意見番」の嫌な役目を買って出たGKの飯倉は「昨年ははっきりした戦術はなかったが、勝つことでお互いに信頼していい方向に向かった。今年は戦術はあるが、全員が同じ方向を向いていない気がする」とチーム状況を分析した上で「チームの根本の治療も必要だと思う。応急処置的な言葉は意味をなさないのではないか。勝つことが前提だが、自分たちがやることを忘れて勝っても良くない気がする。このチームは勝ち負けで判断することが多いから」と苦言を呈した。

今季4人目の指揮官となるOBの吉田孝行氏は今回が3度目の「緊急登板」。最初は2017年夏に解任されたブラジル人のネルシーニョ監督からバトンを受け継いだ。次は19年4月、スペイン人のフアン・マヌエル・リージョ監督の後任として復帰した。しかし、どちらも色を出せたとは言い難い。

今回、吉田氏はクラブを通じて「苦しい中だからこそ、サポーターやスポンサーをはじめヴィッセル神戸に関わる全ての人と一致団結し、この難局に立ち向かうことが必要だと考える。ヴィッセルファミリーのために、全力で働く」と決意表明した。どんなサッカーを目指すのか。まずは強大な戦力の機能不全を解消してJ1残留を果たすことが現実的な目標だが、将来を見据えた種もまいてほしいと思う。中長期的な視野に立った取り組みを継続させるのは、現場だけでなく、クラブ全体の課題のように思う。(北川信行)


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