中国が、中国本土と台湾本島の間にまたがる台湾海峡は「国際水域」ではないと主張し始めた。米軍艦の台湾海峡通過を牽制(けんせい)する狙いがあるとみられ、米中間の新たな火種となりそうだ。中国の「国際水域」をめぐる言動をつぶさに観察すると、海洋進出における独善的な法律戦と〝二枚舌〟が浮き上がる。
米ブルームバーグ通信は6月、中国当局者が米側との会合などで、台湾海峡は「国際水域ではない」と繰り返し主張するようになったと報じた。米側は米軍艦艇の航行を妨げる口実づくりとみて懸念を強めているという。
そもそも「国際水域」とはなにか。中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官は記者会見で「国際海洋法において、国際水域などというものはない」と述べ、概念自体を切り捨てた。中国共産党系の環球時報も「米海軍の指揮官ハンドブックなどで使用される軍事用語に過ぎない」と強調する。
実は、中国のこれらの主張はおおむね正しい。「海の憲法」と呼ばれる1994年発効の国連海洋法条約にも、「国際水域」という用語は見られない。