話の肖像画

落語家・桂宮治(28) 若草色「襲名」、家族と笑顔と笑点と

家族旅行(桂宮治提供)
家族旅行(桂宮治提供)

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《国民的人気演芸番組「笑点」の大喜利メンバーになってから半年がたとうとしている。メンバーカラーの「若草色」も板についてきた》


初収録は黒紋付きの袴(はかま)。どんなところに出ても恥ずかしくない、日本人としての最高の正装です。2週目、「いよいよ自分のカラーが決まる」と意気込んだのですが、プロデューサーさんが「大変なんだ。まだ着物ができてないんだ。自前ので出てくれ」と。家紋(結び柏)の画像とか、着物の採寸表を渡してから何カ月もたっているのに…。「この人たち、本気で僕をメンバーにする気がなかったんじゃないか」と疑心暗鬼になりました(笑)。

若草色の着物を初めて見た瞬間は「この色か…」と思いました。笑点大喜利メンバー時代の桂歌丸師匠の色。スポーツで「永久欠番」というのがありますが、「永久欠色」と言ってもおかしくない色です。


《桂歌丸(享年81)。落語芸術協会五代目会長。「笑点」スタート時の大喜利メンバーであり、五代目司会者。「ミスター笑点」とも呼ばれる》


落語界には襲名というのがあるんですが、大名跡を継いだのに落語がおもしろくないと、その名前を「小さくした」と言われます。先代、先々代のものすごい師匠方の名前に傷をつけることになる。そういう責任を感じながら襲名するんですが、笑点における色も同じ気がします。「若草色」という大名跡を〝襲名〟したイメージです。

昔から笑点を見ている人にとって、若草色は歌丸師匠の色です。若草色の落語家がつまらないということになってしまうと、歌丸師匠にまで迷惑をかけてしまう。だから「若草色は面白い」「若草色は明るい」「若草色は元気になる色だ」と思っていただけるようにやっていかなければいけないんです。そして何年、何十年先に「若草色は宮治の色だね」って、お客さまの口から自然に出てくるようになっていたらいいなと。若草色を自分の色にしたいですね。


《「宮治色」はどんな色なのか》


笑点メンバーは全員、「雲の上の人」です。あの方々と座布団を横並びにさせていただいていること自体、奇跡のようなこと。厳しい上下関係の落語界で、受け入れてくれる師匠方には頭が上がりません。番組を良くしようという〝笑点愛〟あってのことだと思います。

「笑点は演芸番組でありながらドキュメンタリーなんだよ」と、ある師匠がおっしゃっていました。メンバーが生きているさまをあそこでお客さまに見ていただく番組なんだそうです。その中で、自然と〝キャラ〟が出てくるようです。

「よくみんなキャラとかいうけど、あんなものはね、やっていたらおのずとついてくるものだから、決めようとしちゃ、絶対ダメだよ。大丈夫だから。いまの宮治のままで一生懸命やっていれば、おのずとキャラがついてくるから」

司会者の春風亭昇太師匠にも言われました。着物の色は決められるけど、それは見た目だけ。変にキャラ付けしようとせずに、いつも笑顔で大きな声ではきはきと答えることだけは気を付けています。

ただ、家族が大好きで。家族と一緒にいるのが大事。子供たちが学校に行くとき、かみさんは必ずドアを開けたまま、「いってらっしゃい」と見送っていますが、僕も寝床から起きだしてエレベーターまで行ったりしています。だから、家族の話がどうしても多くなってしまいます。なんとなくそういうキャラがついていくのかなとも思っています。長い目でみていただければありがたいです。(聞き手 池田証志)

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