【マドリード=板東和正、大内清】スペインのマドリードで開幕した北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は29日、今後約10年間の指針となる新たな「戦略概念」を採択した。概念改定は約12年ぶり。また、北欧スウェーデンとフィンランドの加盟を認めることで合意した。
戦略概念は、ロシアを「同盟国の安全保障にとって最も重要かつ直接的な脅威」と指摘。中国が「体制上の挑戦」をもたらしているとし、対中政策を初めて盛り込んだ。国際秩序を損なおうとするロシアと中国の試みは、「われわれの価値と利益に反する」と強調した。
また、台頭する中国への対応で連携することを念頭に、「インド太平洋はNATOにとって重要だ」と強調した。
首脳会議に出席したバイデン米大統領は29日、ウクライナ侵攻を受けた安全保障環境の激変に対応するため、ポーランドに恒常的な米軍司令部を新設することなどを柱とする欧州防衛体制の強化策を表明。ルーマニアやバルト3国に巡回させている部隊を増強する。
バイデン政権はまた、最新鋭ステルス戦闘機F35の2個飛行隊を英国に追加配備するほか、スペインに配備されている海軍駆逐艦を現行の4隻から6隻体制にすることでも調整中だと発表した。ドイツとイタリアでは防空態勢の強化を進める。
首脳会議は同日、ロシアのウクライナ侵攻や中国への対応などについて実質的な討議を開始。ソ連時代の軍備に依存するウクライナ軍の近代化に向けた新たな「包括的支援策」でも合意する見通しで、西側諸国の連携を強化する。