北川信行の蹴球ノート

楽天G支援のヴィッセルしかできないことがある

商店街でチラシを配るヴィッセル神戸の千布勇気社長(北川信行撮影)
商店街でチラシを配るヴィッセル神戸の千布勇気社長(北川信行撮影)

サッカーJ1の最下位に沈み、浮上を目指しているヴィッセル神戸だが、ピッチ外の活動も積極的に行っている。本拠地ノエビアスタジアムを活用して神戸市の新型コロナウイルスワクチン大規模接種会場の運営に協力した取り組みは今年の「シャレン! アウォーズ」でパブリック賞を受賞。それ以外にも、地域の商店街などとの結びつきを強めたり、親会社の楽天グループなどとともにスポーツの未来を考えるイベントを開催したり…。元スペイン代表のスーパースター、アンドレス・イニエスタをはじめとした豪華な布陣が注目されがちだが、神戸の街になくてはならないスポーツクラブになるべく、知恵を出し合っている。

地域とともに盛り上がる

神戸・三宮センター街の役員と話し合うヴィッセル神戸の千布勇気社長(北川信行撮影)
神戸・三宮センター街の役員と話し合うヴィッセル神戸の千布勇気社長(北川信行撮影)

リーグの中断期間明けの試合を翌々日に控えた6月16日。新たにヴィッセル神戸のトップに就任した千布勇気社長は神戸・三宮センター街にいた。クラブのスタッフとともに、通行人にチラシを配り、後半戦のホーム初戦だった26日の浦和レッズ戦の来場を呼びかける。その後は商店街の役員との初会合に臨み、「改めて地域密着で活動していければ。神戸の魅力をいろんな方面で伝えていけるとうれしい」などと訴えた。

ノエビアスタジアム神戸の観客に地域の商店街などを訪れてもらう具体的な計画も動き始めている。7月30日の柏レイソル戦で神戸・三宮センター街や新長田エリアの商店街と連動。試合前に鉄人28号の巨大なモニュメントがあることなどで知られる新長田エリアでスタンプラリーなどを実施し、試合後には神戸・三宮センター街1丁目が3年ぶりに開催する「ヨルバル~Night Food Festival」で飲食を楽しんでもらう。観戦者割引などの特典も考えているといい、神戸・三宮センター街1丁目商店街振興組合の植村一仁副理事長は「(ヨルバルは)新型コロナで中止していたが、再開するのであればヴィッセル神戸と一緒に盛り上がれればと思う。ヴィッセル神戸という大きなコンテンツがあり、それによって人が流れる人流をつくっていければ」と期待を寄せる。ヴィッセル神戸スタジアム本部ホームタウングループの米澤崇マネジャーは「試合のある日にスタジアムだけが盛り上がるのではなく、地域と一緒に盛り上がりたい。お客さんに街を訪れてもらう仕組みを考えていきたい」と話している。

Rakuten DAYで大規模イベント

試合前にブラインドサッカーのデモンストレーションを行ったヴィッセル神戸スクールコーチの河本裕之さん(右端)ら(北川信行撮影)
試合前にブラインドサッカーのデモンストレーションを行ったヴィッセル神戸スクールコーチの河本裕之さん(右端)ら(北川信行撮影)

26日の浦和レッズ戦は0-1の敗戦。悔しいリーグ後半戦の初戦となったが、会場のノエビアスタジアム神戸周辺は試合前からさまざまなイベントが繰り広げられ、大勢の参加者でにぎわった。

ヴィッセル神戸が親会社の楽天グループとともに開催した「Rakuten DAY」。「スポーツの未来を共に創ろう」がテーマで、ブラインドサッカーのデモンストレーション、体験会のほか、ゴミの分別回収やフードロス削減、スポーツウエアのリサイクルのためのエコゾーンの設置、LGBTQ+(性的少数者)への理解促進を目指すパネル展示などを行った。

また、ヴィッセル神戸では環境への取り組みとして、6月からノエビアスタジアム神戸やいぶきの森球技場のクラブハウスおよび練習場、選手寮の三木谷ハウスで使用する電力を100%再生可能エネルギーに変更。年間約2600トンの二酸化炭素排出量が削減される見通しだという。

今回の一連のイベントは楽天グループの創業25年記念事業の一環。Jリーグの各クラブとも、さまざまなイベントを開催しているが、ここまで大規模なのは珍しい。

会場に設置されたエコゾーン(北川信行撮影)
会場に設置されたエコゾーン(北川信行撮影)

1993年にリーグ戦が始まったJリーグは地域密着とともに、個々のクラブの〝事情〟に応じた身の丈経営も促してきた。クラブライセンス制度の導入などにより経営面で一定の線引きを図りつつ、クラブの自助努力も求めてきた経緯がある。

とはいえ、小さいばかりが、身の丈ではない。ヴィッセル神戸は「アジアナンバーワンクラブになる」を目標に掲げている。ピッチ内ではJ1残留に向けた苦しい戦いが続いているが、ピッチ外でもアジアナンバーワンを目指してほしい。もちろん、チームの強化は最優先の課題だが、今回の「Rakuten DAY」を通じ、楽天グループがバックアップするヴィッセル神戸にしかできないことが、もっとたくさんあるように感じた。

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